■パナソニックのソフトウェア企業の買収事例と業務の標準化

    

1 ソフトウェア会社の巨額買収の記事

パナソニックは、最近あまり元気があるとは言えない企業になっています。残念です。今年2021年に入って注目されたのは、ソフトウェア企業「ブルーヨンダー」を買収することでした。東洋経済Webにも2021年8月16日付で、前編・後編の記事が掲載されています。
(⇒パナ新社長「就任目前」で巨額買収に同意した胸中:劉 彥甫・東洋経済 20210816)

この記事によれば、[ブルーヨンダーは、人工知能を活用した製品の需要や納期を予測するソフトウェアを開発し、企業の生産や在庫、物流の管理を効率化する支援を行う]とのことです。パナソニックでは、実際に導入して、その効果も確認していました。

まだこれからのことですから、この先がどうなるかはわかりませんが、ソフト・サービスについて考えるのに、参考になる事例だと思いました。あまりに巨額の買収ですから、関係のない事案だという気になりますが、興味深い点がいくつかあります。

     

2 日本企業での導入はむずかしい

まずパナソニックでは、このソフトウェアを導入した結果、[各工場の情報などを自動で細かく把握できるようになり、廃棄や評価減の対象となる在庫を導入前より1割削減できた]と記事にあります。[無駄な作業や在庫を撲滅]することが目的です。

さらに、このソフトウェアによるサービスとして、[最適な業務フローや人員配置などのソリューション提案を]行うことが期待されます。つまり[不要な生産や物流プロセスなどを抑制するノウハウやソリューションを]提供することです。

しかし、買収を主導した樋口専務は[「日本(企業での導入)はものすごく障害が大きい」と認め、「先進的な考え方を持つ顧客と成功事例を重ねることが大事」と話す]のです。まだパナソニック自体でも、このソフトウェアを十分に生かしていません。

サーピス展開をする前提として、各企業が少なくとも業務を標準化していなくてはならないはずです。そうでなかったら、効果が上がりません。素晴らしいソフトウェアがあったとしても、その前提がなされていなかったら、成果が上がらないのです。

       

3 不可欠な基礎訓練

記事に象徴的な話があります。社員について社長の[楠見氏は「決められた仕事は真面目にやるが、それをさらに改善させることがおざなりになっていた」と]言い、[1人ひとりが考えることが薄れてきている]と[危機感をにじませる]とのことです。

パナソニックに限らないことでしょう。一人が、会社全体を見て、改善や改革を考える機会など、ほとんどないはずです。しかし、これなしに[最適な業務フローや人員配置など]を提案できるはずもありません。デジタル技術だけでは成果が期待できないのです。

業務の標準化は、基礎作業にあたります。業務フローを作る前提としても、業務の標準化が不可欠です。それも、システムに頼るよりも、きちんと訓練をした各部門のリーダーが行うほうが、圧倒的によい結果が出ます。不可欠な訓練だとの意識が必要でしょう。

     

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