■品詞の決定要因:主語・述語概念と品詞

     

1 形式的な判別が可能な動詞・形容詞

日本語の文法を考えるとき、私たちが文法をどう使うのかを、考える必要があるでしょう。例えば品詞に関して、動詞と形容詞は判別しやすいので安心して使えます。名詞の場合、その言葉が主格になるかどうかという点を意識しているはずです。

動詞を判別するのなら、(1)終止形がウ段で、(2)イ段に「ます」がつく言葉と言えば分ります。私たちは終止形を見出すのに苦労しません。形容詞の場合なら、(1)終止形の語尾が「イ」で、(2)終止形に「です」がつき、「だ・である」が接続しない言葉です。

動詞は形式によって判別されますし、機能役割について特別意識することはありません。形容詞も形式で判別しますが、名詞を修飾するという点までは意識することもあるはずです。機能役割について、ここまで気にしておけば十分ということでもあります。

    

2 主語になるという条件

動詞と形容詞は活用形がありますから、それが判別の手段になります。判別が形式的にできるということです。名詞の場合、「活用しない自立語」までなら形式的に判別できます。つまり、(1)文節のはじめに来る言葉で、(2)「だ・である」が接続する言葉です。

名詞の定義に、主語になる言葉という条件が加わる例もあります。そう習った人もいるはずです。ところが辞書を見てみると、「満開/最高/唯一」などは名詞扱いされています。これらは主語にならない言葉です。名詞以外で該当する品詞があるのでしょうか。

日本語には、動詞・形容詞・形容動詞・名詞・副詞・連体詞・接続詞・感動詞・助動詞・助詞の10品詞があるようです。この場合、形容動詞とするのは無理があります。かといって助詞なしに直接名詞を修飾できませんから、連体詞ではありません。該当なしです。

名詞であることに、主語になるという条件を加えることはおかしなことではありませんが、そうなると現在の品詞の体系を作り直さないといけなくなるはずです。「満開/最高/唯一」も主格になるというのでは、せっかくの機能役割の条件が役立ちません。

      

3 主語・述語概念と品詞

文法を利用する点から考えてみると、何がわかれば、読み書きに問題ないかということが問題になります。まず、(1)動詞、形容詞がわかること、(2)主語になる名詞とそれ以外がわかること、(3)助詞の機能役割がわかることでしょう。これでいいかもしれません。

助動詞の使い方やニュアンスはわかっているはずです。接続詞も、順接・逆説など、たいてい身についています。品詞が問題になるのは、いわゆる主語と述語に関わる領域といえるでしょう。主語は名詞で、述語は動詞・形容詞・名詞というならスッキリします。

ところが主語概念、述語概念が明確になっていません。これが問題です。品詞と関連させて概念を明確にする必要があります。日本語に主語がないなどと、言っていられません。すでに主語をたてた文章が多くなっています。日本語が変化してきているのです。

▼こんにちの日本語の文章は、在来の文章に比べて主語を明示しようとする傾向を強めている。(中略)たんに文の主語を明示する度合いがますということにとどまらず、日本語の文章が論理的色彩をより濃く帯びるという大きな傾向の一つなのではあるまいか。(中略)論理的な発想こそ、欧文構造が日本語に与えた最大の影響に擬すべきものに違いないのである。 『日本語の歴史6』平凡社ライブラリー

品詞を決めるには、文中での機能役割を考慮することが不可欠になっています。主語・述語概念を明確にしなくては、品詞も明確にならないということです。中核的な領域だけでも文法の整理が必要でしょう。そうなれば読み書きに使える文法になるはずです。

      

This entry was posted in 日本語. Bookmark the permalink.