■マネジメントの基本体系「目的・目標・手段」:目的と目標の違い

1 目的と目標の使い分け

私たちはふだん、目的と目標という言葉を明確に区別して使っていません。何となく同類の言葉という認識で使っています。それで問題なく話が伝わるのですから、日常で目的と目標という言葉を使うときに、特別気にする必要はないのかもしれません。

しかし哲学と科学では、この2つの言葉に使い方の違いがあります。言い換えると、目的と、目標という言葉の使い方で、その人の意識がどちらにあるのかが、かなりの程度わかるのです。『堀場雅夫の経営心得帖』でも、目的と目標という言葉が出てきます。

▼ベンチャーを志す人の自己実現とは、すなわち自分の哲学そのものである。なぜなら、自分の「人生をこう生きたい」と目標とすべき哲学があって、そこへいかに自分を持っていくかということが自己実現になるからである。したがって、自分の哲学も目標もないのなら、自己実現もなくなる。
□ たとえば、「東京へ行きたい」という目的があるから、それを実現するために、「飛行機で行くか、新幹線で行くか」という手段を考えるのである。 p.19

[目標とすべき哲学]が必要であること、[哲学も目標も]必要であると記されています。その理由は、[目的があるから][手段を考える]ことになるからです。ここでは、目標という言葉が、目的に入れ替わっています。それで問題なく伝わるのです。

 

2 主観と客観の違い

目的と目標という二つの言葉がある以上、両者には違いがあるはずです。どこが違うのでしょうか。言われれば、なんだ…と思うでしょう。主観的なものが目的で、客観的なものが目標です。この点だけわかっていれば、意味するところは間違いなく理解できます。

『堀場雅夫の経営心得帖』では、目的・目標に対して、手段が示されていました。目的の下に目標が置かれています。ここでいう目的・目標というのは、どんな状態であるかを言うのであって、数量化しなくては把握できないといった概念ではありません。

目標というのは、数値化したもの、達成可能か不可能か明確になるものが条件だと言えます。その点では、「東京へ行きたい」というのは「目的」です。日時を指定し、正確な地点を示したなら「目標」になります。堀場さんは正確に使っているのです。

[目標とすべき哲学]とは、客観的な基準を引き出す自分の思い、目的だと言えます。だから[哲学も目標も]というのは、「目的も目標も」と言い換えても、ひどく違ったことにはなりません。主観的な思いと、客観的なゴールの設定ということです。

 

3 マネジメントの基本体系

社会科学では価値判断を入れずに、客観的なものを基礎におこうとします。「目的」を「機能」と把握することもありました。機能であるならば、客観的に定義ができるものだと言えるでしょう。目的というのは、大きな目標であるというニュアンスがあります。

哲学では目的が中核に置かれて、目標は補助的な扱いだと言えるでしょう。科学では逆に、目標が中心に置かれます。両者の違いは、主観的であるのか、客観的であるのかということです。前者は定性的であり、後者は定量的であるということになります。

マネジメントでは、「目的」と「目標」の両者が必要になります。はじめに目的が置かれ、信念に基づいた哲学が示されることが必要です。それを実現するために客観的な目標が設定されます。それゆえ、具体的な手段を考えることができるということです。

マネジメントの体系は、目的・目標・手段という体系になっていると明確に言う本はあまりないかもしれません。しかし、「目的・目標・手段」という「主観」「客観」「実現可能性」の各ステップで見ていく必要があります。これが一番の基礎になっているのです。

 

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