■現代中国の社会主義経済 追記:『鄧小平』と『ソビエト帝国の最期』を参考に

1 チャイナ経済に対する強気と弱気

現在、社会主義国は世界でも5か国しかない。ベトナムはTPPに加入したため、そこでのルールに従うなら社会主義経済を捨てることになる。いまあえて社会主義経済の今後について語る場合、実質的に中国共産党体制下のチャイナ経済のことになる。

チャイナ経済の今後について、強気と弱気が極端に分かれている。ヴォーゲルは2015年の『鄧小平』で、今後10年、20年でチャイナ経済のGDPが世界一になると語っている(p.26)。本当だろうか。チャイナ経済に有利だった条件が徐々に消滅するのではないか。

チャイナ経済の今後について、強気と弱気が極端に分かれている。ヴォーゲルは2015年の『鄧小平』で、今後10年、20年でチャイナ経済のGDPが世界一になると語っている(p.26)。本当だろうか。チャイナ経済に有利だった条件が消滅しないのだろうか。

先進国に追いつけ追い越せの時期に、社会主義体制下で合理的な計画を立てて実施すれば、高度成長が続く。ただ、それは一定水準までしか作用しそうにない。いまの中国政府の対外的な強気路線は、国内問題がうまく回っていないことの反映ではないのか。

 

2 「強いソ連」は米ソ双方に必要

ソビエト経済は30年以上にわたって高度成長をした。チャイナ経済も同様に30年以上高度成長を続けてきた。1980年の段階で、アメリカもソビエト経済のピークアウトが分析できていたはずである。もしかしたらチャイナ経済の分析もできているかもしれない。

小室直樹は『ソビエト帝国の最期』で言う。アメリカは[福祉を大削減し、海外援助をへらす。ソ連脅威論がどうしても必要となってくる]。ソ連も政治・経済の大ピンチのときに[威信が保てる]から、[「強いソ連」は米ソ双方にとって必要であった](p.140)。

その後、ソビエトは急速に力を失い、1991年には社会主義国のソビエトは崩壊して、ロシアになった、現在の米中摩擦が、かつてのソビエト脅威論と類似の構造であるなら、今後チャイナ経済は急速に力を失っていくはずである。しかし、そうはならないのだろう。

 

3 アジア的なものの効果

大きな国の場合、ある一部分を抜き出すと全体を見失う。切れ味のよい道具はたいてい切れすぎて間違う。小室直樹もソビエト以外では間違えた。その点、『ソビエト帝国の最期』では焦点がピタッと当っている。チャイナ経済でも参考とすべきだろう。

ロシア人は[脱アジアをめざし、西欧化をめざす]のだが、人造国家のソ連ではアジア的なるものが払拭できす、[西欧的なものとアジア的なもの、あまりの食い合わせの悪さ]に苦労してきた。ところが[ロシアの強みは、そのアジア的なところにある]。

[1812年8月18日]のナポレオン、[1941年7月16日]のヒトラーからの侵略を防御できたのは、ロシアが[あまりにもアジア的であったから]である。つまり[西洋的戦略の定石]から外れていたため、ありうるはずのないことが起きたのである(pp..20-21)。

今後のチャイナ経済に対して弱気であることと、ハードランディングを予測することは別のことである。人造国家のソビエトでも、アジア的なものが一刀両断を阻止してきた。今後のチャイナ経済についていうなら、ジリ貧と表現するのが一番自然であろう。

 

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