■マーケティングと戦略:目標をどう決めるか その11

1 いきなり顧客は決まらない

戦略を立てるまえに、まずはアイデアとしての構想が必要である。その場合、いきなり顧客は決まらない。ビジネス環境から可能性を探り、自分達のやりがいを感じる、やりたいことと合致しているかを考え、自分達の卓越性を活かせるかで判断していくことになる。

営利組織にとって、顧客は固定していない。したがって、顧客からスタートして事業の定義を考えるのは、下手をすると逆効果になる。ドラッカーは[ノンカスタマーの数は、顧客よりも多い](p.57:『チェンジ・リーダーの条件』)点を指摘していた。

従来の顧客ばかりを見ていると、それが少数派になってビジネスが成り立たなくなるリスクがある。新しくビジネスを構想する場合でも、顧客をいきなり決めないほうがよい。事業の定義を行い、成果をあげた場合に顧客が創造されるということである。

 

2 ビジネス環境の分析が前提

ドラッカーは自動車市場のビジネス環境について記す。1970年代になって[市場はライフスタイルという気まぐれなものによって区分され]、[所得は、自動車の購入にとって唯一の決定要因ではなくなり]、[リーン生産が規模のメリットをなくした]のである。

また[ノンカスタマーの変化の大切さを教える最近の例として、アメリカのデパートがある]と指摘する。[最も重要な消費者、すなわち教育を受けた共働きの女性にとって、どこで買い物をするかを決める要因は、価格ではなくなっていた。時間だった]。

ビジネス環境を分析して、その中の重要な消費者を見出すことから事業の定義が始まる。顧客ではなくて、重要な消費者の存在の有無を判断する。自分たちがやりたい仕事の中で、競争力のある強い領域に、潜在的な顧客がいることの確認が前提である。

 

3 「誰に」「何を」「どのように」

「顧客の創造」というのは、ビジネスの結果としてなされるものである。戦略を立てるときに、マーケティングが不可欠である。しかし『マネジメント』での主張である[真のマーケティングは、顧客から出発する]というのは時代の変化によって否定された。

マーケティングとは、「誰に」「何を」「どのように」製品を提供するかを考えることである。「誰に」という顧客となる人たちのことが、その他に先行するわけではない。「who・what・how」のそれぞれが関連して、相互作用の中で決められていく。

自分達は何を成すべきなのかという点を主観的に決めてしまって、その中から、自分達が他と比べて比較優位な領域を見出すことになる。そのとき、この指とまれと言ってアピールしたら、自分達の希望にかなう顧客が集まってきてくれるのか。これらが問われる。

以上のように、戦略のラフスケッチを描くには、ドラッカーの1994年の論文「The Theory of the Buisiness」が参考になる。これを「誰に」「何を」「どのように」というマーケティングの基本にそって整理することから、戦略を考えていくべきである。

 

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