■目標をどう決めるか:人間の心理から その8

1 明確性の原則

高い目標を決め、その達成が簡単でないことを意識しながら、本気で実行していく場合、たいていの人が、自分達の評価は客観的なものでなくてはならないと感じる。達成したかしなかったかが明確であり、できたら数字によって評価を明確なものにしたいだろう。

一生懸命やって、難しい目標を達成したいと思っている人なら、その評価が確実になされるほうが満足できる。こうした人間の心理にもかなった手法が、目標の条件として採用されているといえる。エディー・ジョーンズの『ハードワーク』でも、同じ条件だった。

ジョーンズは本の冒頭で、[人生において、大きな成功を望む時、まず皆さんにやっていただきたいことがあります]と言う。[それは明確な目標を設定すること]だと記している。では目標とは、どういうものでなくてはならないのか。

▼目標は漠然としたものや、抽象的なものではいけません。数字などで具体的に表現され、結果が出たとき達成できたかどうか、はっきりわかるものでなければなりません。

 

2 強いイメージの効果

エディー・ジョーンズは、目標の条件を『ハードワーク』の冒頭で示したうえで、その効果を[明確な目標は、必ず強いイメージを伴います。そのイメージが、成功へと導くのです]と語った。成功の確率が高まるからこそ、明確性が必要なのだということになる。

明確な目標が生み出すイメージの力について、[自分の成功をイメージすると、誰もが晴れやかな気持ちになります。その気持ちが熱意と努力を生むのです]と書いている。イメージができたなら、熱意と努力が生まれるという論理である。

イメージを強めるために[目標を、数字などで表された具体的なものにしなければならない]のであり、それが、その人の大きな潜在能力を発揮させることになるという考え方を採っている。イメージが強くなると、そのイメージが人を刺激し、能力を発揮させる。

▼人の中に眠っている力は、計り知れないものがあります。ほとんどの人がそれに気づいていません。
自分の中に眠っている力を呼び覚ました人だけが、大きな成功を招き寄せることができるのだと思います。

 

3 戦略の裏づけ

明確な目標がイメージを作り、そのイメージの刺激により、潜在能力が発揮できるようになる。ハルバーソンが『やってのける』で指摘した[人は求められた以上のことはしない傾向]がある点も、エディー・ジョーンズにとっては当然のことだったろう。

▼目標は、「そんなことができる訳がない」と思えるほど、大きなものを掲げるべきです。
手の届きやすい目標は、すでにある自分の力から、予想したものでしょう。それでは「眠った力」を呼び覚ますことは、できません。今までに感じたことのない熱意を覚えたり、100パーセントの努力を傾けたりすることはないでしょう。

目標を立てるときに、ジョーンズが原則にしていることは、2つあった。一つが「明確性の原則」、もう一つが「大きく高くの原則」である。明確な目標がイメージを作り、高い目標が熱意を生み、人の潜在能力を高めるように誘導する効果を生じさせる。

リーダーは、こうした人間性を理解した人だということになる。当然ながら、明確で高い目標を立てるだけでは十分ではない。それが達成可能だと思える道筋=「戦略」を示す必要がある。目標というものは、戦略の裏づけなしには機能しないということである。

 

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