■目標をどう決めるか:リーダーのために その5

1 教科書的な発想

星野リゾートでは、経営ビジョンを「リゾート運営の達人」としている。[「会社の向う方向を決めるのは経営陣の専管事項」と考えたから](『星野リゾートの教科書』p.149)、社長の主導で決めた。その際、この実現をはかる尺度を3つ定めている。

①「顧客満足度(アンケートから数値化)」
②「売上高経常利益率」
③「エコロジカルポイント(環境基準の達成度)」

星野リゾートの星野佳路(よしはる)社長は[教科書を経営に生かし、誤った経営判断をするリスクを減らす]ことを目指している。こうした目的のためには、「書店に1冊しかないような古典的な本ほど役立つ」(p.17)と考えられる。

教科書を[1行ずつきちんと理解しながら読み、わからない部分を残さない](p.21)読み方をする。教科書の考えに従うならば、ビジョンの策定をリーダーがするのは当然のことであり、それを表現するときに、複数目標を設定する考え方が自然に出てくる。

 

2 「顧客」の概念

経営の教科書を理解するためには、マネジメントの基礎的な考えを理解しておく必要がある。それにはシンプルな問いの形式が向いている。その点で、ドラッカー『経営者のための5つの質問』はマネジメントのエッセンスを説いたものとして一読の価値がある。

ドラッカーの「5つの質問」では、高度な思考が要求される戦略の分野には深入りしていない。自分達が進むべき道を見出し、進むべき方法を案出し、その道筋を示すことは、簡単なことではない。その前段階の部分を確立するための質問が続いている。

使命が決まれば、おのずから顧客は決まる。自分たちにとって大切な人というのは、組織ならば営利であろうが非営利であろうが「かけがえのない特別な人たち」である。個人においても、そうした人が不可欠である。それをここでは「顧客」と呼んでおく。

顧客の創造というのが、マネジメントの目的である。ビジネスに限らず、非営利の活動でも、個人の活動でも、かけがえのない特別な人たちを獲得するために、マネジメントが必要になる。成功したマネジメントなら、「顧客」が獲得されるということである。

 

3 戦略のための3つの質問

どうやって顧客を獲得するのかを見出すことが、構想の目的である。構想を立てて、それをモデル化したときに、単なる構想が戦略になる。自分たちが他よりもよい提案をし、それを実現していく方法を見つけることによって、進むべき道が見えてくる。

これらをシンプルな質問にするならば、次の3つになるだろう。1つめは「顧客にどう思ってもらいたいか」、2つめは「自分たちの思いを共有してもらうにはどうしたらよいか」、3つめは「思いを実現するための道筋はどうなるか」である。

生産性を向上させるために必要なものについて、ドラッカーは1989年の論文「会社はNPOに学ぶ」で使命、成果、責任をあげている。使命を定め、その裏づけとなる成果を定め、実践のために各人の責任役割を定めるということである。

 

 

This entry was posted in マネジメント. Bookmark the permalink.