■いかなる結果を残すべきか :リーダーになってしまった人へ その5

1 5つの質問の先にあるもの

たった5つの質問を考えることで、マネジメントの中核について考えることができるツールが『経営者に贈る5つの質問』だった。ドラッカーが1990年代に考えたものという。晩年にいたって、自分のマネジメント体系のエッセンスを示すことになった。

5つしかない質問に答えるだけで、マネジメントの基本がわかるようになる。上田惇生は訳者まえがきで[本書こそ、ドラッカーの全経営思想の真髄である]と記した。

質問1「われわれのミッションは何か?」
質問2「われわれの顧客は誰か?」
質問3「顧客にとっての価値は何か?」
質問4「われわれにとっての成果は何か?」
質問5「われわれの計画は何か?」

以上の5つの質問を考えることが基本になる。これらの質問にまじめに取り組むことによって、その先が必要になってくる。ビジネスの構築をしようとする場合、具体的な目標を設定していかなくてはならない。どうやったらよいのか、質問からは見えてこない。

 

2 哲学における2つの問い

マネジメントの体系が3つになることは、哲学などの基本的な体系との比較から考えてみれば、わかることである。「人はいかなる存在であるのか」、「どう生きるべきであるか」、この2つが哲学の中核に置かれる。ここでは、目的と手段が問われている。

ドラッカーの5つの質問を見ると、目的と手段が示されているのがわかる。目的を問うているのが質問1「われわれのミッションは何か?」である。手段を問うているのが質問5「われわれの計画は何か?」である。

質問2から質問4まで、自分と顧客との関係が問われている。これらは目的や手段とは違う概念である。「われわれの顧客」「顧客にとっての価値」「われわれにとっての成果」と並んでいる。「われわれ」と「顧客」との関係が問われる点が哲学とは違う。

 

3 マネジメントにおける3つの問い

「人はいかなる存在であるのか」、「どう生きるべきであるか」という問いは、マネジメントの基本にもなっている。本来、社会との関係を含めて考えるべき問いかけではある。マネジメントの場合、ここに成果という概念が加わっている。

マネジメントでは、「われわれはいかなる存在であるのか」、「どう行動すべきであるか」に加えて、「われわれは、いかなる結果を残すべきか」が問われている。そのとき、「顧客」という概念が示されることになる。

われわれが達成すべき結果は、「顧客」との関係で決まってくると言うことである。自分たちがどんな存在であるかを考えることによって、何が達成できるかが決まってくる。その達成のために、どう行動すべきかが決まってくる。

マネジメントは、3つの問いからなる体系である。目的と手段の間に、目標が問われる体系であると言える。「われわれは、いかなる結果を残すべきか」という問いに答えるためには、結果を明確にすることが不可欠なのである。

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