■なぜマネジメントを学ぶのか その2


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4 活動と「5つの質問」

マネジメントの対象となるのは、何らかの活動です。ここでいう活動というのは、コーヒーを飲むといった個人の行為とは違います。相手あってのものです。人を相手にした何ごとかの行為を活動としています。一定の人に対して、何らかの作用があるものです。

相手の人がいるという前提での行為を活動と捉えると、マネジメントの対象となるのは、この活動であるということになります。マネジメントでは、こちらからの働きかけに対して、対象となった相手方からの反応があるということが前提になっています。

相手方からの反応をどう制御するかが、マネジメントの基礎になります。このことは、ドラッカーの『経営者に贈る5つの質問』を見ても明らかです。一番基本となる「5つの質問」は、マネジメントの基本を見ていくときの「経営ツール」であるといえます。

質問1「われわれのミッションは何か?」
質問2「われわれの顧客は誰か?」
質問3「顧客にとっての価値は何か?」
質問4「われわれにとっての成果は何か?」
質問5「われわれの計画は何か?」

その質問にある対象者は、「われわれ」と「顧客」です。われわれと顧客との間の活動を規定するために、われわれに「ミッション」「顧客」「成果」「計画」を問い、顧客にとっての価値を問うています。基本的なことを考えるための、よくできたツールです。

 

5 「川を上れ、海を渡れ」

ドラッカーは基本を押えるために、5つの質問を提示しました。こうした問いによる把握の仕方もあると思います。しかしマネジメントを体系的に把握しようとするときには、こうした質問の上位概念として、経営ツールを超えた体系があると考えるべきでしょう。

「川を上れ、海を渡れ」という言葉があります。川を上れというのは、過去にさかのぼって調べろということです。海を渡れというのは、海外の事情を調べろということになります。いまの財務省が大蔵省だった時代からあった言葉だとも聞きました。

何らかの制度を考えるときに、過去にどんな事例があったのか、海外にどんな事例があるのか、それを調べることは不可欠なことだったに違いありません。こうした、この言葉の本来の意味も大切にすべきですが、ここでは、違う意味で使ってみたいと思います。

マネジメントには川上と川下があって、上流・中流・下流の3ステップがあると考えることができます。これらの3つのステップは、新しいビジネスを構築する、大きなものの場合にも、目の前の業務を改善する、小さなものの場合にも、当てはまるものです。

川を上れというのは、上流にさかのぼれということです。根本となる第一ステップから考えろということになります。海を渡れというのは、具体的な事例をケーススタディとして学べということです。ビジネスの場合、事例から学ぶ必要があります。

 

6 マネジメントの観点からの判断

上流で問われるのは、目的であり、ミッション・使命であり、理念であり、志であるということになります。中流で問われるのは、目標、戦略、構想、ビジョン、フィロソフィーといったものです。下流では、手段、戦術、計画、スケジュールなどが問われます。

たとえば志というものについて、夢との違いによって説明することがあります。志とは、人に対して何かをしようという思いであり、夢とは、自分が何かを実現しようという思いであるというのです。活動となるのは、夢ではなく、志の方だということになります。

何かをしようというアイデアが出てきたときに、その目的は何かを問うことが「川を上れ」です。自分たちの考えに合致するかを考えろということになります。ドラッカーの5つの質問で、最初に出されているのが、「われわれのミッションは何か?」でした。

アイデアがあったときに問うべきことは、「われわれの目的は何か?」でもかまいません。「使命」でも「理念」、「志」のいずれであっても、考えるべきことは同じになります。自分あるいは自分達はどういうものであるべきかを問うということです。

アイデアを判断するときに、まず自分達の信念に合致したものであることを確認する必要があります。それを確認しろというのが、川を上れということです。また、そのアイデアがどんな価値をもっているかを判断するために、比較対象が必要となります。

ビジネスを考える場合、グローバルに見て通用するかどうかを考えることが大切です。海を渡れというのは、世界に通用するものであるか、世界の事例と比べてどうかということになります。このとき比較できる形式にすることが求められることでしょう。

ここでもマネジメントの考えが役に立ちます。ドラッカーの5つの質問で言えば、「われわれの顧客は誰か?」「顧客にとっての価値は何か?」「われわれにとっての成果は何か?」という点を明確にすることによって、比較が可能になります。

 

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