■なぜマネジメントを学ぶ必要があるのか

1 なぜマネジメントを学ぶ必要があるか

マネジメントは一般教養の一つであるという考えがあります。たぶんそういう言い方でよいのだろうと思うのです。しかし、それで本当にマネジメントの必要性が伝わるのかどうか、気になることがあります。なぜマネジメントを学ぶ必要があるのでしょうか。

マネジメントを学ぶことによって、何に役立つのか、何かいいことがあるのか。こういうある種、あたりまえのことを確認しておきたいと思います。一番基本的なことは、意外に、わかっていると思い込んでいるものです。ある時、ズレに驚くことがあります。

マネジメントの勉強をする目的として、はじめに思いつくことは、自分あるいは自分達の活動が、これでよいのかをチェックするためということです。自分たちの活動の評価を自分でできるようにするために、マネジメントを学ぶことが役立つことでしょう。

自分達の活動の評価を自分たちでできるということは基本です。それができることによって、その次の目的が出てきます。一つは自分たちの活動の問題点を修理・改善するためです。もう一つは、自分たちの活動を構築し改革を行うためです。

一人の人間にとっても、組織にとっても、活動の評価ができることが基礎になります。その評価をもとに、問題点が見えてくる。あるいは、もはや全部を新しくしたほうがいいという判断になるかもしれません。こういう判断の基礎にマネジメントがあります。

 

2 3つの目的

私たちがマネジメントを学ぶ必要があるのは、3つの目的があると言えそうです。ここまでを確認しておきましょう。[1] 活動がこれでよいのかを評価するため、[2] 活動の問題点を修理・改善するため、[3] 新しい活動を構築し、改革を行うため。

これらは営利活動に限りません。非営利の場合でも変りません。個人の場合でも組織の場合でもマネジメントは必要であり、営利の場合でも非営利の場合でもマネジメントが必要だということになります。活動をする対象にはマネジメントが必要ということです。

ドラッカーが亡くなった後、『経営者に贈る5つの質問』が出版されました。1990年代に作られたもののようですが、当初、非営利組織向けのものだったということです。それが営利用にも使えるという声が大きくなって、本の題名に「経営者」が入りました。

5つの質問の基本にあるのは、「顧客」という概念です。ドラッカーが非営利組織に「顧客」の概念を入れて考えるようになったのは、『非営利組織の経営』よりも後のことでした。『非営利組織の経営』では「顧客」という発想は前面に出ていません。

自分達の活動を評価するときに、ドラッカーは「顧客」という概念を見出したということになります。1954年の『現代の経営』では、ビジネスの目的は「顧客の創造」であると記していました。しかし「顧客」の概念はもっと大きかったということです。

自分達の活動に対して、自分だけでなくて、その活動の反映として、相手が必要となります。活動の評価をするときに、活動の影響が及ぶ人たちの評価が不可欠です。そうなると、活動というものは、自分たち向けの行為ではないということになります。

 

3 活動の作用と反作用

なぜマネジメントを学ぶ必要があるのかということを考えると、自ずからマネジメントの対象を考えることになります。営利活動だけではないということ、非営利活動も含まれるということ、組織の活動だけでなくて、個人の活動も含むということになります。

活動の反映となる相手は、営利組織ならば、働く人たちとお客様ということになります。非営利組織の場合も、働く人たちと、サービスの対象となる人たちということです。お客様というと営利に限定するニュアンスがありますから、顧客がよいでしょう。

自分自身のマネジメントが必要なのもお分かりでしょう。自分を自分でマネジメントする必要はどこにあるかと言えば、自分が自分の活動を評価できなくては、成果が上がらないからということになります。対象となる自分が、もう一人の自分に働きかけるのです。

このとき自分達の活動が「どんなものであると思われたいか」が大切な質問になります。自分たちは、どうありたいのか、どういう存在であると思ってもらいたいのか。これを意識しておくことが大切です。自分がどうありたいのかが評価の基礎になります。

自分で自分の評価ができることが大切です。そのとき、孤立した自分だけでなくて、活動の及ぼす影響を評価することがマネジメントの基本にあると思います。作用に対する反作用を意識することがマネジメントの基本です。そこから評価が生まれてきます。

 

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