■「ジョブ型」という労働形態について その2


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4 制度上、ジョブ型は無理

大前が言う通り[私が在籍していたマッキンゼー等の米国企業]ならジョブ型が普通なのかもしれません。しかし[仮に仕事のパフォーマンスが悪かったとしても、日本では簡単に従業員を解雇することもできません]から、制度上も日本にジョブ型は無理です。

問題は、在宅での仕事の生産性がどうかということでしょう。どういう仕事をすればよいのかが、明確に指示されているかどうかです。あるいは、それを確認できるようになっているかが問題でしょう。会社での仕事と変わらなければ、在宅も悪くありません。

しかし長期で、完全に在宅勤務にはなりにくいのが、日本の組織だろうと思います。そこで、リーダーがときどきメンバーの状況を見て、さらにビジネスの環境を見ながら、このメンバーで成果を上げるにはどうしたらよいのかを考えることになるということです。

日本では、メンバーが一定期間、原則として替わりません。そのためこのメンバーで、何ができるかという発想になります。そのとき在宅にするとか、どのくらいの間隔で研修を行うとか、そのあたりの変数によって仕事のあり方が変わるということです。

そうなると、仕事のモデルをどうするか、仕事の仕組みをどうするか、仕事をどう実践し、どう検証していくかということが大切になってきます。必要に応じて、会社での顔合わせも取り入れながら、ゆるやかな形で在宅での仕事に移行できるはずです。

 

5 リーダーのトップダウン

もしかすると最優秀の人なら、大学での講義と図書館での個人的な勉強だけで、圧倒的な実力をつけるのかもしれません。しかし優秀な人たちをも含んだ多くの人たちは、講義以外での先生とのかかわりや、友人とのつきあいによって、多くのことを学びます。

こうした学習の方法は、会社に入ってからも、そんなに違ったものにはならないはずです。上司との出会いによって、仕事を覚えていくこと、同僚から刺激を受けたり、示唆を受けたりということは普通にあるはずです。在宅だけでは、これができません。

いずれ新型コロナの問題も、落ちついてくるはずです。そのとき現在と変わっているのは、リーダーによる仕事の管理が、いままで以上に責任重大になることではないかと思います。これがリーダーの評価につながっていくことになるはずです。

リーダーが先の見える人で、ビジネスを発展、展開させて行ける人なら、トップダウンにしたほうが効率的ですし、もはや、そうするしかなくなるでしょう。様々な決断がスピード化して成果を上げる人が出てくるはずですし、そうならない人もいるはずです。

リーダー間の差が出てくることになるのは当然のことです。もしジョブ型になるとしたら、こうしたリーダーがまず対象になるかもしれません。リーダー養成が組織にとっても大切になってくるということです。リーダーの負荷が大きくなってきます。

 

6 リーダーの養成法

リーダーを養成するためには、どうしたらよいのでしょうか。おそらく、リーダーを教えることはむずかしいはずです。そうなるとどうしたらよいのでしょうか。この点についてドラッカーが論文で語っていることがあります。思い当たるのではないでしょうか。

▼花形セールスマンの生産性をさらに向上させるため最高の方法は、セールス大会の場で成功の秘訣を語らせることである。外科医の仕事を向上させるための最善の道は、学会で自分の仕事について語らせることである。 『プロフェッショナルの条件』

スキルの高い人が、それを他の人に教えようとして、自分の方法を客観視することによって、さらなる生産性を上げることができるようになります。そうした訓練をすることが、リーダーの養成になるということにです。先ずは自分を客観視することでしょう。

自分を振り返って、それが客観視できたなら、どう他の人に教えたらいいのかを考えることになります。その教え方を考えること自体が、自分の方法の確認になっているということです。どうすれば、伝わるようになるのかを考えなくてはなりません。

これはセールス大会でなくても、社内で行えることです。どういう方法で成果を上げたかを他のメンバーに伝えて、実践が可能になれば、少なくともその領域では、成果が上がることでしょう。これをもっと広い領域でできるようにする人がリーダーになるのです。

在宅での仕事のやり方がかなりの程度、標準化されているならば、日本ではおそらく成果が上がるはずです。標準化するために仕組みを統合するのがリーダーであり、リーダーへの負荷が、そのままリーダーの実力アップにつながるのではないかと期待しています。

 

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