■ドラッカーによるマネジメントの体系化について:その2


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4 マネジメントの全体像を示したドラッカー

ドラッカーが『現代の経営』によってマネジメントの全体像を示したことが、マネジメントを体系化したことになると思います。今後もこの本と『マネジメント』がマネジメントの全体を示す定番の本のままでしょう。もはや簡単に全体を扱えなくなりました。

マネジメントの概念が拡がってくると、全体像を描くのはきわめて難易度の高い仕事になるはずです。[マネジメントとは、あらゆる組織のための体系であり、機関である](p.9:『明日を支配するもの』)というのがドラッカーの1999年の考えでした。

しかし1966年出版の『経営者の条件』につけた「まえがき」(1985年のもの)では、[本書は、成果を上げるために自らをマネジメントする方法について書いた]と記しています。[自らをマネジメントすることは常に可能である]という前提に立っているのです。

ここでの「マネジメント」は、『明日を支配するもの』で示した「マネジメント」の概念と違います。マネジメントを論じながら、その中心に置かれているマネジメントという用語が多義的なのです。ドラッカーはわかるだろうと、説明しないまま使っています。

 

5 マネジメントの目的

マネジメントを広い概念で捉えようとする場合、成果に焦点を当てるしかありません。組織だろうが個人だろうが、成果をあげさせるものがマネジメントだということになります。このとき目的を果たすこと、社会的な役割を果たすことは不可欠な条件です。

『マネジメント』で[マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割がある](上・p.42)とあります。(1)組織の目的を果たすこと、(2)仕事を生産的にして成果を上げさせること、(3)社会的な役割を果たすこと…の3つです。

『マネジメント』の初めの頁にある言葉は、「まえがき―専制に代わるもの」になっています。ドラッカーからすれば、マネジメントとは専制を阻止するだけの力を持つものだということです。大きな概念で捉えた場合、マネジメントの目的はこれしかありません。

ドラッカーの場合、組織に限らず、個人であっても、社会にいてほしいと思われる存在になろうとすることが基本に置かれているのです。組織の存立の条件も、社会に有用であることが必要になります。個人も同じです。社会貢献は自らの基盤を安定させます。

個人としての能力を発揮することが必要です。その上、組織を作って各人の得意分野を組み合わせたならば、個人個人の努力の総計よりも大きな力を発揮することができるはずだという確信があります。これがマネジメントを構築していく一番の基礎です。

 

6 多義的なマネジメントの概念

広い意味でのマネジメントの概念を押えたうえで、個々の「マネジメント」という用語が示す実質を見ていかないと、おそらく混乱します。『明日を支配するもの』の「マネジメントの常識が変わる」でも、ぼんやりしていると意味することが分からなくなります。

▼マネジメントと起業家精神がコインの裏表であることは、そもそもの初めから認識されていてしかるべきだった。マネジメントを知らぬ起業家が成功し続けることはあり得ない。イノベーションを知らぬ経営陣が永続することもあり得ない。企業にせよ、他のいかなる組織にせよ、変化を当然とし、自ら変化を生み出せなければならない。 p.43

ここでいう「マネジメント」がどういうものであるかを意識しないと、マネジメントと起業家精神の関係がわからなくなります。あるいは逆なのかもしれません。起業家精神と対比されている以上、ここでのマネジメントの概念は…と考えるべきなのでしょう。

マネジャーという用語があります。管理者というニュアンスがあるために、ドラッカーは今後あまり使いたくないと、1993年「ポスト資本主義社会におけるエグゼクティブ」で語っていました。しかしここでの「マネジメント」は運用管理が中心の概念です。

起業家精神(企業家精神)をもって、今までにないものを創り出すことと、標準化しながら安定的に管理、運用していくことはコインの裏表、あるいは車の両輪になります。最初にエンジンをふかしてスピードを上げ、その後、適切なスピードを保つということです。

ドラッカーがマネジャーという用語を使いたがらなくなってきたことは、ビジネス環境の変化の反映でしょう。プロフェッショナルが中核的な仕事を担うようになると、その人たちのやる気が成果に反映されてきます。こういう人たちを簡単に管理などできません。

大切なのは成果です。社会にとってよき存在になるために、自らも満足の得られる存在になるために、どうするのがよいのかという仮説がマネジメントの中核にあります。その原則の大枠をまとめたのがドラッカーでした。まだそれらの整理がなされていません。

ドラッカーによるマネジメントの体系化は『現代の経営』でスタートし、『マネジメント』で修正を加え、1980年代後半からは、いわゆる「ポスト・モダン」の体系になってきました。大幅な修正の成果を組み込んだ体系化はまだなされていないのです。