■ミッション、ビジョン、アクションプラン、スケジュール:その3


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7 思った通りにいかない前提

ビジョンがあれば、こういう方法で、こうやって進めれば、このあたりまでは行けるはずだと、大きな見通しが立てられます。目標を正確に立てるためには、こうした見通しが必要です。これがビジョンというべきものの内容、概念ということになります。

目標が立てられたなら、それを生身の人間が実践して達成していかなくてはなりません。以前、リーダーの練習について書いたことがありました。自分で小さな組織を作ってささやかな運営をしてみると、情けないくらい、思った通りにいかないことを痛感します。

実際に何かをなそうと思って計画を立ててスタートしてみても、自分ではどうにもならない事情で環境が変わることがあります。思わぬ人が体調を崩したり、その都度、状況が変わって、予定通りにならないものです。その都度、スケジュールが変更になります。

何かを進めて行くときには、一定の環境がずっとそのまま保たれることなどありません。状況が変わることが当然ですし、その適応力まで求められています。思った通りにいかない、思いもよらないことがおこるという前提の中で実践するしかありません。

 

8 「ジャパン・ウェイ」というアクションプラン

エディー・ジョーンズの『ハードワーク』を読むと、目標達成のための手段が最初から十分に検討されていたことがわかります。目標達成のために、どういう方法で実践するかが重要です。それが「ジャパン・ウェイ」という日本独自のやり方でした。

▼他の国には真似できない「日本人らしさ」を、徹底的に生かしたものです。そこにはプレースタイルやトレーニング方法だけでなく、努力の仕方、マインドセット(心構え)など、精神的なものが多く含まれています。 p.3:2016年版

こうした実践方法に基づいて、スケジュールが組まれています。当然のことですが、[スケジュール通りに行動することが目的ではないのです]。[目標に近づくには「今、どうすることがいいか」]を考えて、変更が加えられていきます。

ジョーンズの方法は、3年先のワールドカップに向けての大きな目標を、2カ月ごとの小さな目標におとしこむものでした。[大きな目標を叶えるために、小さな目標を一つ一つ達成していく]こと、2カ月ごとに[結果を、分析したり、評価したりする]方法です。

▼2カ月という期間は、物事をチェックするのに、とても適していると思います。これは私の経験から言えることですが、どんな物事でも準備し、吸収するのは、だいたいそれぐらいの時間を要します。 p.24:2016年版

この2カ月単位の実践と検証を継続することによって、大目標を達成していくのがジョーンズの原則でした。そのときの実行プログラムである「ジャパン・ウェイ」がアクションプランであり、実行を管理するカレンダーがスケジュールということになります。

 

9 世界で一番の努力不足の日本人

目標をどうやって管理して、成果をあげていくのか、その方法が『ハードワーク』には示されています。具体的な事例で裏づけされていて、マネジメントの本よりも応用できる内容かもしれません。目標達成のために、重要な点を見ておきたいと思います。

[1] 目標を書いたものを繰り返し読むこと
[人間は忘れっぽい生き物です。日々の雑事に紛れたり、直面している問題に気を取られたりするうち、当初の目標をつい見失うこともあるのではないでしょうか。それを避けるためにも、目標を自分専用のメモなどに書きとめ、繰り返し読むことは、とても大事だと思います](p.23)。

[2] 課題を明確にすること
やるべき[課題を一つ一つ明確にすること]。[課題が明確になれば、人はそれを克服しようと、努力します](p.30)。

[3] 準備を重視し習慣化すること
[準備こそが成功への近道です](p.150)。イメージ通りの試合をするために、[身体的、精神的、社会的]な準備をすること、さらに、やるべきことをやるということを習慣にすることが必要です。[習慣ほど安定したものはありません](p.74)。

[4] 物事を客観視し、データの裏づけをつけること
[勝利や成功のためには、準備として練習を重ねるしかありません]が、[有効な準備をするためには、根拠が必要です。その点、データは非常に明確な根拠を与えてくれます](p.99)。[物事を客観視すれば、必ず見えてくるものがあります](p.101)。

[5] トレーニングの時間を区切って、自主的に行うこと
トレーニングをするとき、[時間を区切るという簡単なことにより、理にかなった、能率的なものになる](p.52)のです。また[自分で考えたり、決断したりすることから、大きな力が生まれ]、[自主性を持つことで、個人の力は引き出されます](p.52)。

こうした方法に基づいて[物事に懸命に取り組むこと]をジョーンズは「ハードワーク」と呼びました。各国での指導の経験から[努力が一番不足していると感じたのは、日本人](p.88)でした。伸び代があったのです。ラグビー以外の分野でも同じでしょう。

 

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