■ミッション、ビジョン、アクションプラン、スケジュール:その2


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4 ミッションと目標の概念

ミッションから目標が生まれ、目標からアクションプラン、スケジュールが決まります。アクションプランもスケジュールも、目標を達成する手段というべき存在です。そのためミッションと目標の概念を確認して、それらの役割や機能を活かす必要があります。

ミッションはリーダーの信念に基づいて作られるものです。「自分たちは何をもって記憶されたいか」を問うことによって、自分たちの信念を確認するとともに、組織が社会的な存在であることも意識することができます。こうしたバランスが重要です。

ミッションはリーダーの信念、志に基づくものですから、一度決められたものは、たびたび変更されることはありません。信念に基づくものである以上、客観的な概念にはなりません。ミッションは、主観的な概念であり、簡単に変更されないものだといえます。

これに対して、目標は個別・具体的です。達成すべきゴールを明確にして、全員が誤解なく理解する形式が必要になります。達成・未達成が明確になる客観的な形式で記述される概念です。目標は組織が達成すべきゴールですから、簡単には変更されません。

 

5 星野リゾートのビジョン:リゾート運営の達人

では、しばしば目にするビジョンというものは、どんな概念でしょうか。ミッションや目標の概念と比較すると、ビジョンというものがどういう概念であるのか、わかってくるはずです。『星野リゾートの教科書』にある星野リゾートの例を見てみましょう。

星野リゾートの経営ビジョンは、「リゾート運営の達人」というものです。このフレーズだけならば、客観的とはいいかねます。達成したかどうかも明確ではありません。しかし星野リゾートでは、ビジョンの実現を図る具体的な尺度が定められています。

「顧客満足度(お客様アンケートの結果を数値化)」「売上高経常利益率」「エコロジカルポイント(環境基準に関する達成度を示すデータ)」の3つの尺度を数値目標に指定して、[相反する課題をクリア]することによって「リゾート運営の達人」になれます。

ゴールを一言で表すならば、「リゾート運営の達人」ですが、これだけでは内容がわかりませんし、達成の仕方も分かりません。個々の項目に客観的な数値目標が指定されることによって、3つの目標がバランスよく達成できるようになるのです。

ビジョンを設定することによって、ゴールに到達する道筋が見えてきます。星野リゾートの事例では、3つの目標を束ねた概念がビジョンでした。個々の目標の上位に大目標があります。その大目標を達成するための方法が個々の目標で示されていました。

 

6 ビジョンの概念

『ハードワーク』でエディー・ジョーンズが、2009年のワールド・ベースボール・クラシックで世界一になった原辰徳元監督について、[どのようなチーム作りをし、どんな戦い方をするかという、独自で、非常に明確なビジョンを持っていた]と記しています。

ここでジョーンズのあげている2項目に注意してみましょう。1つは「どのようなチーム作りをするか」、もう1つは「どんな戦い方をするか」です。この2つは、何のために必要でしょうか。こんなことは、言うまでもないでしょう。世界一になるためです。

原監督は2009年ワールド・ベースボール・クラシックで世界一になることを目標としていました。目標を達成するために、チーム作りと戦い方において、どんな状態にならなくてはいけないのか、その姿が原監督には見えていたということです。

ビジョンを持っている人は、どうすれば目標が達成できるのか、その道筋が見えている人といえます。個々の戦術ではなくて、どうすればよいのかというグランドデザインが描けているのです。ビジョンとは目標達成までの道筋を描いたものといえるでしょう。

原監督の場合なら、少なくともチーム作りと戦い方の両方が見えていました。(1)あるべき姿のチームを作るためにどうすべきか、(2)あるべき戦い方をするためにどうすべきか。これがわかることが目標達成のために必要です。これがビジョンになります。

エディー・ジョーンズが日本ラグビーチームの目標を設定したとき、日本人の本来の力への確信がありました。世界のトップグループに入れるということが見えていたのです。それを「世界のトップ10」「3年後のワールドカップでの勝利」と表現しました。

ビジョンを持ったリーダーの指導により、高い目標を達成することができました。ビジョンがなければ、高い目標を掲げても、現実のものにできなかったはずです。大目標を達成する方法(ルール)と道筋(ルート)を示すのがビジョンであるといえるでしょう。

 

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