■目標について:エディー・ジョーンズの考えを参考に その3


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7 目標の範囲と期間

目標には妥当する領域と妥当する時間があります。ビジネスで意識すべき原則的な条件は、「いつ・どこで・どんな場合」です。妥当する領域と妥当する時間によって、当然のように目標が違ってきます。目標は1つではありません。

領域・時間の組み合わせで目標が複数つくられます。大目標の下に、中目標、小目標が置かれることも当然あることです。日々何も変わらないことが目標になる部門もあります。安全を維持するためには、地道であまり目立たない一貫した目標になりがちです。

こうした中に、注目を集める目標が掲げられることがあります。エディー・ジョーンズの目標も、そうしたものの一つといえるでしょう。魅力的な目標が掲げられ、その結果、ラグビーというスポーツで、日本のチームが世界で通用することを示しました。

日本ラグビーチームの2015年ワールドカップに向けた目標の事例は、今後も成功事例として残ることでしょう。成功のために、ジョーンズの示した目標がどう作用したのか、ケーススタディとして見ておく価値があると思います。

 

8 目標に関する5つの原則

信念からミッションをつくり、そこから目標を生み出したものは、たいていワクワクするような内容になっています。同時にこの背景にあった地道にやるべきことをやるための目標についても、認識しておくべきだと思います。

組織をあげて達成したくなる目標を見出すことは簡単ではありません。こうした大きな目標がある場合、それを支える目標がしっかりしていて、それらが達成されることによって、大きな目標の達成が可能になります。複数の目標の達成を前提とするものです。

ドラッカー『マネジメント・上』のマーク&スペンサーの項目(pp..128-129)に目標の5つの原則が示されています。これらを確認してみることは役に立つはずです。ここにドラッカーの目標についての基本的な考えが示されています。

(1) 目標とは、ミッションを実現するためのものである。
(2) 目標とは、行動に結びつけるものである。
(3) 目標とは、資源と行動を集中させるものである。
(4) 目標とは、一つではなく複数のものである。
(5) 目標とは、ビジネスの全領域ごとに必要なものである。

ドラッカーはビジネスの全領域を8つに分けて、これらすべてに目標が必要だ書いています。以下がその項目です。①マーケティング、②イノベーション、③人的資源、④資金、⑤物的資源、⑥生産性、⑦社会的責任、⑧必要条件としての利益。

 

9 明確なビジョン

私たちは目標の中に、ワクワクする目標があってほしいと思います。こうした目標があるならば、組織は飛躍するだろうと感じるからです。ミッションに基づく目標の場合、成功事例から学ぶ必要があります。『ハードワーク』ではどうだったでしょうか。

目標を立てるとき、どこまでなら行けるという見通しが必要です。ロードマップを描いていくといことになります。この用語は様々な使われ方をしますので、違和感があるかもしれません。好みの言い方でよいと思います。用語にこだわる必要はありません。

大切なことは、目標達成までの道筋を描くことです。そこに時間の見通しをつけて、時間と領域に基づいた地図を作り上げます。何かをする場合、私たちはある時・ある場所で行うしかありません。道筋と時間によって、目標を思い描くことになります。

『ハードワーク』のエディー・ジョーンズは世界で通用するレベルまで行けると思い描くことができました。世界のトップ10、3年後にはワールドカップで勝利をあげられる。おそらくこの世界を知っている人だから、ここまで見えたのでしょう。

ミッションを決めるときに、リーダーの信念に基づいて決定するという要件が中核になることを確認しました。そういう人が目標への道筋を描くことになります。このことをジョーンズは[独自で非常に明確なビジョン](p.79)を持つことだと表現しました。

明確なビジョンがあれば、明確な目標が描けます。そして[明確な目標は、必ず強いイメージを伴います。そのイメージが、成功へと導くのです](p.16)。[選手たちに、自分がスターになったときの、華やかなイメージを抱いてほしかった]と記しています。

ミッションに基づく目標がなぜワクワクするのか、それはリーダーのビジョンによるイメージが魅力的だからでしょう。それを実現して新しく生まれ変わるためには勇気が必要です。[勇気とは、慣れ親しんだ自分を捨てること]とジョーンズは言います。

ジョーンズはまた、リーダーの資質を示しました。リーダーはプロでなくてはなりません。プロならば[結果が出なければ、責任を取らなければなりません]、[結果が出なければ、責任をとらなければならないという意識は、緊張感を生みます](p.191)。

リーダーはリスクを取る必要があります。目標を考えるとき、リーダーをきちんと決めて、決定権と責任を明確にする必要があるということです。目標について考えるとき、『ハードワーク』は今後も欠かせないケーススタディの教材であり続けるでしょう。

 

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