■目標について:エディー・ジョーンズの考えを参考に

1 具体的に表現された明確な目標

目標について考えるとき、鮮やかに思い返すのは、『ハードワーク』のエディー・ジョーンズの言葉です。この人は2012年から2015年まで、ラグビー日本代表のヘッドコーチでした。選手に初めて会ったとき、[私は選手たちに、力強く言いました]。

▼「君たちは、これから世界のトップ10に入る! そして、3年後のワールドカップに、必ず勝つ!」 p.2 『ハードワーク』2016年

結果は、[日本は世界のトップ10に入り(最高9位)、2015年のワールドカップでは3勝を上げることができたのです]。素晴らしい成果をあげた人です。『ハードワーク』を読んで驚きました。目標について、とても明確に書かれています。

▼人生において、大きな成功を望む時、まず皆さんにやっていただきたいことがあります。絶対にしなければならないことと言っても、過言ではありません。
それは明確な目標を設定すること。
目標は漠然としてものや、抽象的なものではいけません。数字などで具体的に表現され、結果が出たとき達成できたかどうか、はっきりわかるものでなければなりません。
明確な目標は、必ず強いイメージを伴います。そのイメージが、成功へと導くのです。 p.16 『ハードワーク』2016年

こういう考えの人が、ラグビー日本代表の目標を作ったのが、トップ10に入ることと、ワールドカップでの勝利でした。その時点で日本チームは、何十年か前にワールドカップでまだ1勝しかしたことがなかったとのこと。そんなことさえ私は知りませんでした。

『ハードワーク』をマネジメントの本だと思って読みました。目標の概念がこちらの理解と違う場合、あまり参考にならないのですが、その点、この本は安心です。目標について一番わかりやすく書かれている本だと思います。

 

2 結果の達成が確認できるもの

自分たちの目的や使命(ミッション)というものは、どうしたいという思いなしに成り立たないものです。したがって主観的にならざるを得ません。このミッションが、具体的な目標になります。このとき目標は、客観的なものでなくてはなりません。

エディー・ジョーンズは、明確な目標を設定することが必要だと言い、[数字などで具体的に表現され、結果が出たとき達成できたかどうか、はっきりわかるもの]であることを条件としています。客観性の条件は必要不可欠です。

ジョーンズの掲げた目標も客観的なものであり、結果の達成が確認できるものでした。(1)世界のトップ10に入ること⇒最高で世界9位!、(2)2015年のワールドカップで勝利を得ること⇒3勝! 両方とも見事に達成しました。素晴らしいことです。

ビジネスでは、目標値という言い方をする人がいるくらいですから、数値目標になるのが一般的です。こういうとき、たいていの場合、売上や利益が目標になっています。数量化されていて客観的ですし、達成したか未達なのかが一目瞭然です。

こうした売上げ、利益の目標とともに、これとは別の目標を持つ組織があります。たいてい強い組織の場合、別の目標を持っています。出店の数や新規案件の数といった種類のものでもありません。実質的な成果と結びついた目標が掲げられています。

 

3 ミッションが生み出す目標

ミッションから目標を生み出す事例として、ドラッカーが救急病棟での例を挙げていました。救急病棟のミッションは「患者を安心させること」です。患者が安心するために必要なことは、患者を診ること、それも早く診ることになります。

ここから救急病棟での目標が決まりました。「救急病棟に運ばれた患者に対して、一分以内に医者の診察が受けられるようにすること」です。全員の患者が、時間にして1分で診察が受けられたかどうか、これは客観的な確認ができます。

こうした目標は、自分たちのサービスの質を保証するものです。成果が実質的に関連付けられていると感じる目標でしょう。達成できたら素晴らしい、そして誇りに思えるような目標だと思います。なかなかビジネスでは、こうした目標を立てません。

ジョーンズは[明確な目標は、必ず強いイメージを伴います。そのイメージが、成功へと導くのです]と言っていました。「強いイメージ」というのがポイントでしょう。スポーツならば、「勝ち負け」が売上げや利益に当たりそうですが、これとは違うものです。

▼目標がはっきりしていれば、目先の勝敗はたいして問題になりません。チームや個々の選手も、何が欠けていたのかを課題として自覚します。それは自分の基準を作ることであり、基準は成長とともにどんどん上がっていきます。 p.72 『ハードワーク』2016年

 

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