■マニュアル総論 その6 業務マニュアルの再定義

1 再定義された業務マニュアル

業務マニュアルの中核に置かれるのは、業務プロセスではありません。多くの方が、業務マニュアルを作るときに、業務プロセスを気にします。作業手順書が業務マニュアルだと思っている人がいます。こうした認識は、業務マニュアルになじみません。

業務マニュアルが再定義されたと言うのが一番簡単な話になるでしょう。もはや作業手順が業務マニュアルの中核的なものではなくなっています。プロセス中心の作業ならば、機械が代替できるものが多くありますから、業務システムの構築ならば役立ちます。

業務システムを作る人たちの中には、業務フローにするのに便利なアプリケーションを使って、業務プロセスをまとめたという人がいます。それ自体悪いことではありません。しかし、これで組織の全業務が把握できるかと言えば、全く別の話です。

営業を考えてみればわかるはずです。営業をするときに、業務プロセスにそって営業活動をするでしょうか。この順番で営業すれば、成功確率が高まるといった標準化ができるものは、単純な営業にすぎません。それは付加価値のある営業ではないでしょう。

2 ルールをプロセスに先行させること

営業のプロの場合、その人なりの方法があるにしても、同時にある種のルールがあるはずです。プロセスではなくて、ルールにそった営業というものがあると見るべきでしょう。逆にパターンに則った営業スタイルは、個人的なスタイルが多いだろうと思います。

ある一定以上の付加価値を持つ業務の場合、標準化するときにはプロセスが前面に出ません。ルールが先行します。プロスポーツで考えてみるとわかりやすいと思います。ルールがなかったら試合にならないのです。そのルールにそって、方法が決まってきます。

業務マニュアルというのはビジネスのルールブックの面に重きを置くようになってきています。プロセスは変更可能、あるいは組み合わせ自由が認められるケースがかなりあるということです。ビジネスの変化に合わせた柔軟な方法が必要になります。

3 変らないルール

変化に合わせたビジネスを構築する場合に、変わらないルールが必要です。ディズニーランドの場合、価値基準がSCSEに定められています。安全・安心を最優先すること、それに続いて礼儀正しさ。そのあとにショー、そして効率という風に続いています。

東日本大震災のときに、どれだけ素晴らしい対応をしたのか、これはネットで検索をかければ、たくさんでてくると思います。こうしたルール作りが日本の組織では苦手です。ルールが、細かくなりすぎたり、不自由を感じさせるルールになったりします。

業務マニュアルを作ったら、仕事の効率が悪くなったという相談も時々ありますが、これはルール作りがへただということでしょう。しかし失敗したら、それを修正していけばよいのです。修正を続けていけば、実践的に使えるルールに近づけるかもしれません。

自分たちの組織が成果をあげて収益を得られるように、同時に社会から歓迎されるようにするために、ビジネスのルールを定めていくことが原則です。プロセスの決定は実践のあとに決まってきます。そのあとも変更がどんどん加わります。役割が違うのです。

スポーツの場合でも、ルールが決まっているからこそ、勝ちパターンができます。コンプライアンスとは別に、組織のルールを自分たちで作り、それを前提に勝ちパターンを構築することが必要です。この考えに立つと、業務マニュアルが一気に薄くなるのです。

This entry was posted in マニュアル. Bookmark the permalink.