■「誰に・何を・どのように」伝えるか:文章の基本 その1

 

1 作文教育の欠如

今年の就職活動が始まり、学生たちはエントリーシートに200文字とか400文字の文章を書くことが求められています。担当外ですが、どうしたらいいのかという連絡が続いています。きちんとした作文の教育がなされていないのでしょう。ビジネス人も同じです。

文章が書けないという人は、けして少なくありません。作家のような文章を書きたいという過大な希望ではなく、ビジネス文書がきちんと書ければよいのです。学生でも作文レベルのことにすぎません。そのくらいのレベルなら、何とかならなくては困ります。

何が書けない理由なのでしょうか。学生もビジネス人も同じ理由があがります。「何を書いたらいいのかわからない」「どう書いたらいいのかわからない」という2つです。とても原理的なところでつまずいています。このあたりから考えてみましょう。

 

2 「誰に・何を・どのように」伝えるか

文章を書くときに最初にすべきことは、「誰に・何を・どのように」伝えたらよいかを考えることです。「誰に」というのは、わりあいわかりやすいと思われるのでしょう。そうなると、「何を書いたらいいのか」「どう書いたらいいのか」が問題になります。

文を書くときに、私たちは4つのステップを通っています。実際には感覚的に行っていますから、ほとんど意識されないはずですが、①伝えたい内容を考える、②内容を選ぶ、③適切な言葉を選ぶ、④言葉を並べる…という段階をとっています。

「①伝えたい内容を考える、②内容を選ぶ」が「何を書いたらいいのか」の段階です。「③適切な言葉を選ぶ、④言葉を並べる」が「どう書いたらいいのか」に当たります。苦手な人たちは、こうした基本の練習が十分でなかったという意識があるのでしょう。

 

3 「誰に伝えるか」を考えること

文章は、一文一文の連なりによって全体が出来ていきます。この全体をどうやって決めるのかが大切です。決定するときに一番重要な要素は「誰に」伝えるのかということになります。誰に伝えるかを十分に考えずに文を書きだそうとしても無理があるでしょう。

「誰に伝えるか」を考えることは、その人が、何を知りたがっているのかを考えることにつながります。「誰に」が決まったら、その人が欲しい内容を見つけることです。これが「何を」ということです。「誰に」を考えないと「何を」が出てきません。

「何を」伝えるのかが決まったら、それをどう伝えるのが適切かを考えることになります。的確に伝えるには、標準的な文章のルールに従わなくてはなりません。言いたいことが決まっても、それを日本語で伝えるのか、英語で伝えるのかで言葉は違ってきます。

⇒この項続きます。

 

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