■仕事の仕方について:中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』

 

1 ロケットスタートを切ることが重要

昨年後半、思いもよらぬ出来事があって、急に忙しくなりました。余裕のない状態を立て直すのはむずかしいことです。締切ギリギリの仕事が続きました。ちょうど自分なりの成果が見えてきた時期だったので、それがきれいにまとめられないことが残念でした。

もっと忙しいのに、圧倒的な成果を上げている人はたくさんいます。今の仕事のやり方ではダメだと痛感するしかありません。そういう思いで年末を過ごしていました。こういうとき、中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』を読みました。

中島聡は伝説のプログラマーとも言われます。ウィンドウズ95や98開発のキーマンでした。この人の仕事のやり方を一言で言えば、ロケットスタートを切って、早いうちに仕事の大枠を作る、10日分の仕事なら2日で8割を仕上げてしまう…というものです。

本人の言葉を引くと、[「時間に余裕があるときにこそ全力疾走で仕事をし、締切が近づいたら流す」という働き方]ということになります。[猛ダッシュのロケットスタートを切ることが重要です]。それしかないと、何となく思っていたので身に染みました。

 

2 プロトタイプを作ること

中島は[最もよくないのが「ラストスパート志向」]だと言い、[どんな仕事でも、やってみないとわからない部分が必ずある]と指摘します。[「最初はのんびりしていても、最後にがんばればなんとかなる」という根本的な過ちを改める]ことが必要です。

[締め切りの前に締め切りがあると考え]ること。[締め切りに間に合わせようと考えていても、締め切りには間に合いません。しかし、締め切り前に締め切りがあると考えると間に合います]。たしかに2日で8割仕上げれば、締め切りに間に合うでしょう。

では何をもって8割仕上がったと言えるのでしょうか。中島の答えは、プロトタイプ(試作品)を作るということです。プロトタイプとは、[多少のバグを無視して、とりあえず大枠を作ったもの]。これがあると[全体のイメージが固まります]。

これこそ文書作成講座やマニュアル作成講座で必ず触れる点です。プロトタイプを作って最初にそれを示すことによって、メンバー間のイメージの齟齬が修正できます。自分の仕事を進める場合にも、プロトタイプがあると[仕事がやりやすくなります]。

 

3 基本設計をするときの2つの考え方

プロトタイプを作るためには、基本設計が重要になります。いいアイデアが必要ですが、それは[新しい何かである必要はなく、すでにあるものの組み合わせによる応用に過ぎない]とのこと。中島は2つの考え方を統合して基本設計をしていると記しています。

一つは、いまあるモノを[「何か使い勝手の悪い部分、気に食わない部分はないか?」という視点で眺めてみる]ことです。この答えを出せばいいアイデアになります。使い勝手の改善、気に食わない部分の修正を[実現すればいいだけ]です。

もう一つは[「何か新しい商品・サービス・考え方が出てきたら、それと何かを組み合わせて面白いものができないかな?」という視点で世の中を眺めること]。[「これで何かできないかな?」と考え]ることが、新しいものを生みだすということです。

Windows95以前のWindowsは使い勝手が悪いので、「ドラッグ&ドロップ」を導入し、[「右クリック」の概念を現在の形に]して、使い勝手をよくしました。[当時は左ボタンを使うことがメインで、右のボタンは今ほど使うことがありませんでした]。

よいものなら完璧な完成品でなくても[世界に大きなインパクトを与え]ます。[発売当時、Windows95には約3500個のバグが残っていました]。[深刻なバグ]を除去して、[許容範囲を見極め]て[そのまま発売することになりました]。

完璧主義やラストスパート志向ではいい仕事ができないということでしょう。中島の場合、毎日朝4時に起きて、ロケットスタートでその日の仕事をはじめているとのことです。大いに反省しながら、この本を読み終えました。

 

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