■文書作成講座を終えて:文書作成に何が必要か何が重要か

 

1 A4に1枚でまとめる文書

文書作成講座の講義をしてきました。A4に1枚でどうまとめるかということにポイントを絞った講義です。参加した方々は研究開発部門の人たちでした。日々の業務でおやりになっていることのレベルは高くて、専門的な領域に対して私はあれこれ言えません。

皆さんが参加された目的は、日々の報告書をどうやってすばやく書くかというスピードを求めてのことではありません。研究開発に関連した重要な文書をどう書くか、それを知り身につけることが目的です。質の高いものを書くのは、そんなに簡単ではありません。

まずはどういう手順で文書を組み立てるのか、そんな話から始めました。重要な文書というのは、内容が重要であるものです。文書を作る場合に求められるのは、内容を重要なものにすること自体ではなくて、内容の重要さを正確に素早く伝えることになります。

ところが内容の重要さというのは書かれたものから判断されます。大事なことでも、明確な記述がなされなければ、相手に伝わりません。内容が明確になることで、内容が検証できるようになります。文書を作ることが内容を検証して高度化する訓練にもなるのです。

 

2 ポイントとなるメモとその補強

何かを創造するときに、多くの場合、ふと断片が思いつくものです。ある種のイメージでもあり、ある種の部分でもあります。それが消えないようにすることが、まずなすべきことです。それを引き寄せて目鼻立ちをつけていくことが重要なステップになります。

断片を引き寄せる過程で、いきなり全体像が見えてしまうこともあります。あるいはそこから苦労することもありそうです。いずれにしてもはじめは断片でしょう。断片を大切にすること、断片が消えないように残すことが大切なポイントになります。

私たちの思考はつねにあちこちに動き回っていて、いいアイデアもその流れの中に埋もれるリスクがあります。アイデアを残すためにはメモしておくことが必要です。メモに残したならば、さらにそれを文章の形式に直します。メモの補強です。

文章になっていれば、思いついた断片は残ります。イメージでも論理でも、明確な言葉にしておくことが、思考を見える形式に保存することと言えるでしょう。断片が見える形になっていたなら、そこから連想、類推、思いつきといったものが生まれます。

断片がある一定の形をとるためには、ある種の結晶作用が必要です。いくつかの断片が集まって、もっと大きな構造が見えてきます。このとき、メモの量がある程度ものをいいます。発想の豊かさは、メモに残した断片の多さに反映されるようです。

 

3 内容に目が行くシンプルな形式

いいアイデアでも、いいコンセプトでも言語化されることによって判断され評価されます。新聞記事ならば、リードと呼ばれる最初の100文字程度のまとまりが勝負の鍵です。A4に1枚で勝負をかける文書ならば、その評価は最初の部分で決まります。

最初に大切なものを記述し、そのポイントを解説し、最後に意義や展望をまとめる形式がシンプルでわかりやすいでしょう。大事なものに絞って、大事なものから記述するというのが原則です。逆ピラミッド形式と呼ばれるものが標準的な記述形式になっています。

詳細ではなく、全体像や大枠を示すことになります。A4に一枚ですから、内容量はたかが知れているのです。量の少なさが価値につながります。重要なものがはじめに置かれていますから、それを判断すればよいのです。判断のスピードが圧倒的に早くなります。

ビジネス文書の場合、形式がシンプルでわかりやすいものが好まれます。わかりやすい形式なら、内容に目が行きます。内容を重視するがゆえに、文書の形式はわかりやすいシンプルなものがよいのです。では内容は、どういう観点から評価されるのでしょうか。

言うまでもないことですが、マネジメントの視点で、価値があるかどうかが判断されます。ビジネスの世界では、それが実際にビジネスになって成果を上げるかどうかが評価基準です。ビジネス文書が同じ視点で判断され評価されるのは当然のことだと言えます。

 

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