■就職活動と企業の経営:ホームページの記述など

1 自分の時間確保が学生最大の関心

今年の就職シーズンもそろそろ終わりのようです。求人倍率が高かったとはいえ、希望どうりに行った人ばかりではありません。面接に行って話を聞いてみたら、どうも違ったという人たちがかなりいました。仕事内容の変化した会社がかなりあるようでした。

漠然と事務系の仕事がいいと思っていた学生などは、あまりの求人の少なさに驚いたはずです。多くの仕事がシステム化され、事務系の仕事は減っています。人間ならではの仕事をいかに作っていくかが問題なのでしょう。「事業の再定義」が必要なのだと思います。

こうした意味でも、就職活動の動向を見るのは興味深いことです。学生の意識と会社側の体制とがマッチしている場合もありますし、おおきな齟齬のある場合もしばしば見られます。学生側は自分の時間がほしいのに、長時間労働の職場はまだ多くあります。

生産性の問題が今後とも問題になり続けるだろうと、思わざるを得ません。結果として労働時間の短縮が実現できるのかどうか、注目されます。今年もまた、優秀な学生が自分の時間の確保可能な会社を探すうち、現実の厳しさに目覚めていく例がありました。

 

2 HPでチェックできる企業の姿勢

例年、何人かの学生から、エントリー候補の会社がよいかどうか教えてほしいと言われます。今年は100社程度を調べることになりました。HPが充実してきていますので、ある程度のことは浮かび上がります。各組織ごとに経営姿勢に大きな違いがあるものです。

例えばブランドの高い会社のCSRをみて驚いたことがあります。施設内にある自動販売機の収益の一部を寄付しているという内容でした。今も記述が残っています。こうした根本的なミスを見せつけられると、組織のマネジメントが大丈夫なのかと不安になります。

ご存じの通り、CSRというのは組織の社会的責任のことです。組織と社会の永続的な発展のためにどんな活動をしているかを示すものです。単に、いいことをしていますということではありません。自分たちの組織が社会に存在する意義を示す機能を持っています。

最終面接に行った学生が、年俸制とあるけれども残業代は出るのだろうか…と不安になって聞いてきた例もありました。HPには企業理念の記述がなく、社長あいさつも無内容なのに、収益拡大を示す表が大きく掲載されています。残業代は出そうにありません。

 

3 就職活動を通じた成長

今年の相談でいささか驚いたのは、面接での質問の話でした。いままでで一番辛かったことを詳しく聞きたがる組織があるようです。どうやって克服したかと、情報収集のように聞かれたという話でした。一社や二社ではありません。何人もの学生から聞きました。

学生たちは、そういう会社には行きません。それが相手にも伝わるのか、たいてい連絡がこないということでした。わざわざ、うちの職場では辛い目に合いますからね…とアピールするようなものです。会社のイメージを悪化させるだけの無駄な質問でしょう。

こうやって何社か訪問するうちに学生たちも現実が見えてきて、自分の本当に大切にするものが何であるかを自覚するようになります。ある程度、苦労した人の方が就職活動で成長するという感じを受けました。希望通りにあっさり行くばかりがよいとは言えません。

希望した会社から内定がもらえず、もう一つ本命にしていた会社を勤務地の関係から断念した学生から報告がありました。総合的に考えて希望した会社から内定をもらえたこと、辛いことがあったけれどもこの結果に悔いはないというものでした。立派だと思います。

 

4 企業永続の理論を参考に

ビジネスはかなりのスピードで変化しています。内定がもらえなくても、あの会社はいい会社だと言われるところがある一方、一生回復しそうにない決定的に悪いイメージを与えてしまった会社もありそうです。これらがかなりの程度、HPの記述に反映しています。

そのつもりでHPを見てみると、組織の生産性の高さ、付加価値の大きさ、従業員を大切にしている組織がどうか…などHPから見えてきます。そのとき参考になる基準を提供しているのが、ドラッカーの「企業永続の理論(THE THEORY OF THE BUSINESS)」です。

これらは、嘘かと思われるほど単純に見える。もちろん、そのような明瞭かつ一貫性のある有効な事業の定義にたどり着くには、時間をかけた作業と、思考と、試行錯誤を必要とする。だが組織が成功するには、必ずこの事業の定義を行わなければならない。

「事業の再定義」が不可欠だということです。自分たちがおかれている経営環境についての洞察、自分たちの使命は何か(何を成果とするか)、強みは何か(それをどう仕組みにするか)といった組織の基盤を徹底的に詰めることがいかに大切かと痛感します。

 

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