■文書作成の方法:「誰に」「何を」「どのように」

 

1 素質のある人ほど練習を

学生の文章力に格差が広がっているのは、ご存知かもしれません。メールを見ただけでも驚くほどの違いがあります。たった一言のやり取りでおわるメールがほとんどですが、その中に達者な文章が確実に混ざっています。すばらしい感性の裏づけがありそうです。

彼らが社会人になって、いずれ若手のリーダーになってくれたら…と期待しています。すばらしい文章を書く人たちが、ビジネスで求められるような実質的に意味のある結論を示して、そのポイントを簡潔に説明してくれたらと願わずにいられません。

感性のすばらしさは、どちらかというと素質というべきものでしょう。一方、論理的な構成をもった文書を作成するためには、練習が大きな役割を果たします。素質がある場合、練習をしっかり行えば、よくできた文書が作れるようになるはずです。

しかし現実には、やや残念な結果が待っています。文書を作成する部署の人たちの多くが、文書作成の練習をしたことがないと言います。そのためか、自信がないと言うのです。達者な文章を書いてきた人たちが、素質のままに仕事をしてきたのかもしれません。

 

2 文章や文書の練習は個人で

かつて自分の文章を真っ赤になるまで上司に直してもらったという世代がいました。紙の文書のときには、そういうこともあったのかもしれません。ただ効果があったかどうかは不明です。少なくとも学校の先生が学生の文章を直すと、たいてい劣化します。

いまはデジタル文書が一般的ですから、練習は個人の問題だとされるのかもしれません。そのこと自体、健全な傾向だと思います。他人が修正などすべきでありません。文章や文書作成の練習は本来自分で行うべきものです。問題の中心は練習方法になります。

このあたりが問題になってきているのかもしれません。セミナー企画を立てる人から、違った形式の文書講座をやりませんかとお声がかかりました。一人一台のパソコンを用意して、講義中にパソコンで文書作成をする講義…という提案です。

講座は今秋ですので、もう少し内容を詰めたいところです。その前に、いまお勧めしている練習法をご紹介しておきます。思いつきをメモしておいて、それをA4に一枚から数枚の文書にする方法です。当たり前の方法で、特別目新しいものではありません。

 

3 「誰に」「何を」「どのように」

メモをします。思いつきを書きます。それに理屈をつけようとしていきます。説得力があるようにするために、誰に向けてなのかを確認します。思いつきのメモに、誰かに向けて言うべき内容の断片があるかを確認します。何かありそうなら、そこに焦点を当てます。

こういう人なら、このテーマや内容なら聞いてくれるかもしれないという風に、メモを発展させます。こういう内容があったなら…と記しておくだけでもよいのです。そうすると自然に「何を」を考えることになります。最初から「何を」などありません。

思いつきのメモから、「誰に向けて」を考えていくと、自然にこういうもの…という感じが出てきて、「何を」が展開していきます。そうしたら「どのように」と考えます。ここでの「どのように」がまったく実現不可能なものなら、夢のような話に過ぎません。

「どのように」を考えると、実現可能性を意識することになります。こういうものがあったらと思考を拡げたものが、現実に連れ戻される感じでしょう。こうしたやり取りを自分一人で行うのです。「誰に」「何を」を意識していると、気づいたり思いつくものです。

「誰に」「何を」「どのように」が決まったら、文章を作る基礎ができたことになります。あとは構成の仕方を学べば何とかなるはずです。多くの場合、断片があるのに展開不足でいいパーツが手にできていないのです。それがあれば、文書の内容は充実します。

 

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