■就職シーズン:心配ない学生と難航する学生

 

1 3つのチェック・ポイント

就職シーズンになって、連日学生がやってきます。こちらが心配するまでもなく自分でやっていけそうな人から、まずいことになりそうな学生まで、はっきりした差がついています。今年の就職戦線がどうなっているのか、全体像はまだ見えませんが、必ずしも良いばかりではなさそうです。

しかし具体的な業種や会社の話はここではしません。景気や業種ごとの変動は今後も続くはずです。どんな就職環境になっても、学生の中で心配なさそうな人と、心配になる人が出てくるだろうと思います。何が問題になるのでしょうか。現時点で気になっているのは、3つのことです。

(1) 講義の出席率。無意味な欠席が多くないか。
(2) 学校の勉強以外に何か取り組んできたものの裏づけがあるか。
(3) 自分で会社選びができるか。

就職に難航するか心配ないかの差は、ほぼこの3つが原因になっている気がしています。正確なデータがあるわけではありませんし、3つとも完璧な人がいたら成功するのは当たり前です。ただ、ここから大きく外れた人の場合、問題が生じています。

 

2 皆勤賞の評価が高いのは当然

最初に問題になるのは、学校の勉強をまじめにやってきたかどうかです。全科目の詳細な状況はわかりませんが、出席率の高さと成績はかなりの程度関連します。もっともな理由がなくて何となく休みがちな学生の場合、就職に苦労しがちです。

そういう人も心配になるのか、相談にやってきます。就職活動をほとんどしていない人もいますし、何となく他人事のような傾向の人が目立ちます。成績が悪かった人でも就職に成功する例は、いくらでも見られますが、意味もなく講義を休んでいた人の場合、就職で成功する例は、あまり一般的でありません。

こういう人たちは就職活動が最大の勉強になるのかもしれません。この時期の苦労が役に立つことを祈ります。こちらも、いくつかの情報を伝えてみたりしますが、たいてい無駄になります。しかし就職活動がきっかけで、表情が変わってくる学生もいます。希望は捨てられません。

中学高校と皆勤賞だった人に対する評価が高いのは、当然のことでしょう。学校を休んでいたとしても、それ以外の活動が評価されることは当然あります。実際、自分の趣味に関係する会社でアルバイトするうち、そのまま就職した人もいます。ただしこれは少数派です。

 

3 実力を裏づける何かが必要

ビジネス人でも、何か自分なりの勉強をしている人は資料を作っているはずです。記録をしたノートなりファイルがありますから、それを見せれば、どの程度のものなのかわかります。新入生たちに勧めるのは、関心のあることがあったら、資料を集めておくようにということです。

これにはやや苦い思いがあります。服装のセンスがよくて、ドレスや衣装の専門家になりたい学生からも、相談されていた学生がいました。彼女はただセンスがよかっただけでなくて、勉強していたはずですが、その資料を作っていませんでした。

もともと控えめな学生でしたから、面接でも興味があると一言伝えただけのようでした。服装を見ればセンスの良さはプロにも分かったでしょうし、突っ込んだ話を聞いてくれたなら、たぶん気がついたはずです。しかしそういう場面がなかったようです。結果として、わかりやすいアピールが出来なくて、服飾関係の会社に入れませんでした。

「学校の勉強以外に何か取り組んできたものがあるか」と聞かれたとき、それを裏づけるものがないと、納得してもらえないことがあります。何らかのノートを作っていたり、ファイルを作っていれば、その話ができます。ノートやファイルの抜粋があるなら、見せるチャンスもあるかもしれません。

以前、雑誌社の就職面接をやっていた人が、ノートでも何でも持ってきてくれればいいのに…と言っていたことがありました。努力を裏づける何かがあれば、選ぶ方も安心なのでしょう。学生の関心分野に関して、面接担当者はしばしば学生に負けます。何かがなくては判断できないということでしょう。

 

4 会社選びは難しい

会社選びが大切なのは言うまでもありません。優秀な学生が就職に難航しているケースもあります。都心からやや離れた自宅から1時間以内に通勤できる会社だけを選んでいるうち、だんだん選択肢が減っていった学生がいました。

条件が厳しい場合、会社探しを他の人と同じようにしていては、難航するはずです。早いうちから、条件の合う会社をたくさん見つけておかないと、候補になる会社の絶対数が少ないのですから、選択肢が減っていくのは当然です。

会社選びの失敗で一番多いのは、良いと思った会社が思ったのと違ったというケースです。内定をもらって会社を確定してから気がついたという人もかなりいて、問題になります。学校でも会社研究という講義をしているところがあります。ただ、どこの会社がいいとは言えなくて、形ばかりの講義になりがちです。

インターンシップが重要視されるのも、こうした事情があるからでしょう。インターンシップ中にここは違うと思ったなら、早めにやめればよいのにと思いますが、まだ柔軟な対応がなされていません。インターンシップ先の評判を公表するなど、学校側も工夫すべき点がありそうです。

とはいえ、毎年お見事という選択をする学生が必ず一定数います。まだ知られていない会社を見つけてきたり、募集していない部門に来てほしいと言われる例もあります。次々よさそうな会社を見つけくる学生と、いいところがないと言い続ける学生の差は、どこにあるのでしょうか。これが実力なのでしょうか。まだ明確にできていません。

 

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