■業務マニュアル作成:業務記述の前提条件 その2

 

1 業務を記述するための変換作業

業務マニュアルを記述する前提として、業務をどう把握するかという問題があります。これは業務を記述する前提条件です。そのためには「話し言葉を書き言葉に変える変換作業よりも、数段大きな変換作業が必要」と書きました。思ったほど簡単ではありません。

このことは業務を記述する必要に迫られた人ほど、切実に感じるようです。先輩方に指導をいただくことが出来ませんという声がほとんどです。業務の記述のノウハウが断絶してしまったのでしょうか。業務システムに任せたという面もあったかもしれません。

システムの専門家が業務の整理・分析を指導するケースがよくあります。不満がしばしば寄せられます。業務システムを作るのと概念が違いますから、当然のことです。強い会社のシステム部長に成果を上げた、システムと無関係な人が就任することが増えています。

 

2 プロセスから考えることの問題点

業務を考えるときにプロセスから考えると間違います。医療なら、治療方針をどう決めるのか、その決定をするのにどういう環境がよいのかと考えるのが業務を考える基本です。作業手順をもって業務であると考える人達がいます。プロセスしか見ていないのです。

数年前、商社のシステム部長さんから、業務システムの操作マニュアルの中に、業務マニュアルをビルトインさせたい…と言われました。見識を疑います。逆でなくてはなりません。業務の仕組みが整理されてこそ、業務システムの利用の仕方が決まってきます。

業務は大小のプロセスが複合的に組み合わさった概念です。それを明確に認識するには、目的・方針を詰めていかなくてはなりません。これをやることで、業務が明確になってきます。業務プロセスの区切りは、定量的あるいは客観的には決められません。

 

3 価値観や感性に依存する判断

業務に関して、(1)各業務が鎖のように完結していること、(2)各業務がある一定の大きさにそろっていること…が必要だと前回書いておきました。これは料理のレシピを考えればわかるはずです。レシピを作る人が、ステップ数とステップごとの作業量を決めます。

カレーの作り方が何ステップなのか、決まりはありません。途中で作業の流れが切れていたら、料理が完成しません。(1)のようにステップが決まっていて、それが鎖のように次につながっていくことが必要です。(2)で言う通り、作業量をそろえる必要があります。

この際注意すべきことは、業務を整理したとしても、一直線の業務プロセスにならないことが普通だということです。どうしても業務プロセスを検証する必要があります。そのとき検証のための分析基準と、それをどう適用させるのかが問題になります。

こうした基礎的な検証の場合、業務の本質がむき出しになります。業務に正解はありません。価値観や感性に大きく依存しながら判断します。美しさやシンプルといった概念が先に表れて、その後追いをするのが検証です。何たること! 基準は後からできるのです。

☆ 前回 ⇒[その1] さらに… [ 形態とはどんなものか:ポストモダンの方法

 

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