■創造性のある職場の構築:『ぼくがジョブズに教えたこと』を参考に

 

1 なぜ創造性が重要なのか

ノーラン・ブッシュネルは、スティーブ・ジョブズが「師」と仰いだ伝説の起業家だそうです。何十もの起業を成功させてきた人が、創造性を発揮させるためのアドバイスを『ぼくがジョブズに教えたこと』にまとめています。「はじめに」で語っています。

状況は変化するもので、つねに柔軟性が求められる。同じルールをあらゆる人、あらゆる状況に適用しようとすれば、土壌が均質でやせたものになってしまう。そして、創造性は衰え、死んでしまう。硬直的なルールのもとでは想像力が窒息してしまうのだ。

スピードが大事です。<アイデアが生まれるスピード>も<知識が移動するスピード>も<ライバルが反応するスピードも早くなった>から、<変わらなければ>なりません。創造性が重要になります。<すばやく動けるのは創造性豊かな会社だけ>だからです。

会社にクリエイティブな人が来てくれなくては困ります。ただ、こういう人を<管理しようとしても、うまくいくはずがない>のです。逆に、<すぐれた仕事環境とフレキシブルなガイドラインさえ提供すれば、彼らはすばらしい成果をあげてくれ>ます。

 

2 採用基準は「情熱」

ブッシュネルは採用基準として「情熱」をあげます。<情熱を基準に採用すると、部門の中核になる人材が得られる>のです。こういう人は<自分の経歴ではなく、アイデアについて話がしたくて面接に来る>、このとき<どうしゃべったか>が大事だと指摘します。

具体的な基準として「多趣味の人」をあげています。<趣味を持つ人は、いつもいろいろと学んでいる>からです。<さまざまな知識に対する情熱>が<前進する力となる>と評価します。また<好奇心と情熱をもつ人は読書する>から、読書も評価基準になります。

こうした考えの基礎には、<クリエイティブなアイデアや製品、サービスは、頭に豆電球がともるように生まれるものではない。分析と解決をくり返して少しずつ形作られるものだ>という洞察があります。こうした考え方は、堅実で王道を行くものでしょう。

 

3 クリエイティブな人を雇う

私たちは、<自分の力を発揮できるのはどういう環境なのだろうか>と自らに問うべきでしょう。採用側も、クリエイティブな人を求めて会社の業務の仕組みを整えるなど、環境整備をするとともに、リスクをとらなくてはなりません。そのヒントも示されています。

<組織がフラットになるほど、現場からCEOまでの階層が少ないほど、創造性という面ではいい会社>であり、良いと思っても<一つのことにすべてを賭けてはならない>、またリスクを<具体的、定量的に考え><恐怖にはデータで立ち向かおう>との提言です。

<クリエイティブな人を雇うというのはリスクをとる行為であってリスクを減らす行為ではない>のです。本物を見出さなくてはなりません。<才能があり、とんがった人物を見つけて、その人物にぴったりの役職を作るのだ>と言います。これは大変なことです。

口先だけの人間を排除するため、<どう判断するのかを尋ね>て、具体的な判断力を確認すること、さらに仕事のプロセスでなく、<なぜそうするのですか。それがなぜ重要なのでしょうか>と聞いてみる必要があります。以上のように、役立つ話が満載の本です。