■世界的経済学者の勉強法:キンドルバーガー方式

 

1 カード方式の難しさ

どうやって勉強したらよいのかという問題は、ビジネス人でも研究者でも簡単に解決のつかないテーマのようです。梅棹忠夫が『知的生産の技術』で推奨する方法はカード方式でした。例えば本を読んで思いついたことをカードに記して保存していく方法です。

梅棹の使ったのはB6の大きさのカードでした。カードに一項目だけ記します。思いつきを一つ一つ独立させることになります。こうして集まっていくカードの中から、何枚かを組み合わせることによって、ヒントが得られるようになるはずです。

要素をカードの単位にして、それを組み合わせて構造にする形式であるといえそうです。この方法はすばらしいと思われて、多くの人が真似しようとしました。しかし、ほとんどの人が挫折したはずです。増えていくカードの管理と、その利用が簡単ではありません。

 

2 本にメモをしていく方法

伊藤元重の『東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと』でチャールズ・キンドルバーガー教授の読書法を紹介しています。世界的に有名な国際経済学の教科書を書いた学者でした。40歳以降、経済史の大著を次々出してベストセラーになったとのこと。

この人が80歳を越えたとき、スイスでの会合のときにディナー席が隣になったので、若かった伊藤は先生に研究方法を尋ねたそうです。<中年になって経済史の研究を始め、しかもそれからずっと大きな本を出し続けることができる秘訣は何か>という質問でした。

答えは、<研究の秘訣は本や資料の読み方にあると思う。これはと思う本や資料をじっくりと読む。そして重要だと思うところにはアンダーラインを引いておく。さらに気がついたこと、疑問などがあったら、欄外に手書きでよいのでメモをしておく>…でした。

 

3 自分のメモからメモを作る

キンドルバーガー方式の真骨頂は、本を一冊読み終えたあとにあります。<アンダーラインをした内容や自分の書いたメモを、シングルスペース(つまり行間を空けないでという意味)でタイプする。それで立派なメモができる>、これを続けていきます。

<何冊も本を読めばそれに応じてメモも増えて行く。ある程度メモが増えたら、今度は自分の書いたメモにアンダーラインをつけながら読んでいく。気がついたこと、疑問に思ったことがあれば、それを欄外に書いておく>のです。これでメモのメモができます。

このメモのメモが増えてきたら、これを読んで<メモのメモのメモ(memo on memo on memo)もできてくる。この頃になれば1冊の本が出来上がる準備が完了する>とのことです。この方法に従うと、自分の考えが連想によって拡がっていくことになります。

自分の考えをメモしておいて、そこから連想を働かせてさらなる思いつきを得るキンドルバーガー方式について、<強烈なインパクトのある発言であった>と伊藤は記しています。現実的で効果のある方法だろうと思いました。さっそくはじめるつもりでいます。