■業務マニュアル作成のために:初心忘るべからず
1 業務改革に必要な叩き台
日本人はマニュアル作成が苦手だという見解があります。中井久夫はそう書いていますし、実際のマニュアルを見せていただくと、否定できない気もします。出来のよくない操作マニュアルがかなり見られます。業務マニュアルはもっと問題があります。
業務マニュアルの場合、出来の良し悪し以前に、体系的にまとまった文書がない組織が多くあります。業務の変化が早かったため、個々の業務についてその都度周知がなされ、OJTで仕事を覚えてきていくのです。こうした状態でも各業務は行われています。
ただ業務改善、業務改革をしようとするときになって、叩き台がないことの不備を痛感することになります。業務には、もともと正解がありません。環境とともに変化していきます。その変化に対応しようとすると、業務マニュアルが必要になります。
2 とにかくはじめること
多くの場合、業務改革を行おうとするとき、業務マニュアルの作成が始まります。しかしその後、どう書いてよいのかわからない状態になって、先に進まない事態にしばしば陥ります。こういうとき、どうしたら良いのでしょうか。
ほとんどの方が、業務マニュアルなど書いたことがないとおっしゃいます。それでかまいません。担当者は、なぜ業務マニュアルが必要なのかを確認しましょう。その目的に合うものなら、どんな形式でもかまいませんから、書き始めてしまうのがよいと思います。
書くことによって記録が残ります。拙いなりに結果が残ります。初心忘るべからずです。「初心」とは芸の未熟さ拙さのことです。拙い文書であっても、それが実力です。それをしっかり見るべきです。とにかくはじめないことには先に進みません。
3 業務プロセスを記述する
大切なことは、まず業務改革をすることを決め、そのために業務マニュアルを作ると決めてしまうことです。やるやらないの決断は不要になります。どう作るかの検討をしていきます。そのとき、何が必要なのかがわかってきます。
手始めに必要なのは、現状把握です。業務の仕組みがどんな状況なのかを、客観的に把握できるようにすることが求められます。現状のどこが問題なのか、それをどういう方向にもっていこうとしているのか、つぎつぎ明確にしなくてはいけない点が出てきます。
率直なところ、数ヶ月やったところで、完璧な業務マニュアルなど出来ません。作り出した人ならわかりますが、こまごまとした作業手順よりも、その上位の業務のプロセスがどうなっているのか、それをまず把握しなくてはいけないことに気づきます。
ここまで来ると業務のプロセスを書いていくことが必要なのだ、と気づきます。本来のプロセスが不明確で、きっちり守られていなかったことに気づくこともあります。なぜ行われていないのか、その原因を見つけることが、そのまま業務改革につながります。