■電子文書と紙文書 3/3:紙文書に戻した理由

1 日本語は縦書きが基本

私たちは、文字を書く方向を普段あまり意識しません。しかし、文字を書く向きが文化そのものなのかもしれません。アジアは、東・南・西アジアに分かれます。これらを分ける基準が、文字の書かれる方向だ、と論じたのは宮崎市定でした[宮崎市定という天才]。

縦書きが東アジア、左から右の横書きが南アジア、右から左の横書きが西アジアです。日本語は縦書きが基本です。印刷された雑誌は、興味深い素材になっています。本文は縦書きが圧倒的に多く、目次は横書きが多くなっています。使い分けがなされています。

目次は文ではなく、見出しを並べるものです。この場合、横書きが有利になります。ぱっと見てわかるのが見出しですから、ぱっと見て、上から下へと視線を流していくのが自然です。雑誌の縦書き横書きの使い分けは、このあたりを考慮してのものでしょう。

 

2 ビジネス文書は横書きが基本

ビジネス文書の場合、横書きが原則です。一気に読める形式になっていれば、スピードの点で横書きが有利です。パソコンなどのデジタル機器との相性も横書きを有利にします。たとえばマニュアルが縦書きになるというのは考えにくいことです。

問題は、紙と画面の違いです。少し前から業務マニュアルを電子化して、タブレットに搭載する試みが流行りました。その結果、紙の実在感が圧倒的である、と再認識されることになりました。よほど工夫しないと、電子化したマニュアルは、紙のものに勝てません。

多くの工場で、業務マニュアルをタブレット端末に載せてみました。それが次々、紙のマニュアルに戻っています。主張してきたことが、現実になってきました。業務マニュアルの場合、全体像が見えること、必要な記述がすぐ見つかること…が必要なのです。

 

3 横書き文書の作成には工夫が必要

全体像を認識するには、現在の自分の立ち位置を知ることが必要です。いまどこを見ているのか、認識できる仕組みが求められます。必要な記述に、すぐに到達できる仕組みも必要です。この点、全文検索は不便でした[項目の立て方・並べ方]。

紙のマニュアルは、欠点が表に出にくいのです。ページまたぎをしても、紙の実在感が助けてくれます。しかし、電子化したマニュアルに実在感はありません。ページ概念を明確にするため領域設定が必要です。必要項目に迅速にアクセスできる構造が必要です。

マニュアルの場合、一つ一つの文がまとまってブロックを作り、ブロックがまとまってユニットになるという構造が必要です。そうしないと、電子化しても使い勝手で紙に負けてしまいます。まとめ方も、時系列にそった記述だけでは対処できません。

画面で見てもらう横書き文書を作る場合、ぱっと見てわかる記述と構造にする必要があります。たんなる文章の記述ではなく、本の目次のように構造を作り上げる必要があります。これには訓練が必要です。繰り返し構造化と言うのも、そのためです。

 

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