■体系化と構造化:基礎になる考え方・2つの検証方法

1 体系化と構造化の違い

概念の構造化が必要だと言われますが、しかし、どういうものか説明するのは、簡単ではありません。体系化との違いも必ずしも明確でありません。多くの場合、重なっています。体系化の場合、全体像を示すときに使われ、構造化より狭い概念と言えます。

構造化のおもな価値は、体系化につながる点にあります。例えば、何かを論じた文章があったとします。その文章の骨格をまとめたものは、構造化になります。同時に、全体を示しますので、体系を示したものになりえます。

なりえます…ということは、ならないこともある、ということです。体系化されている、というためには、全体像が示されている必要があります。もとの文章が断片を語っている場合、その論述の構造を示すことができても、体系化はできません。

あるいは文章の一部を取り出して、まとめた場合でも、体系化できている場合があります。全体像を構築するのに、必要な要素が含まれていて、その構造が示されていたなら、体系化されていると言えます。

かつては、過不足なく全体像をきれいに見せたいという思考が強く働いていたために、体系化という言い方が優位でした。しかし、不完全な状態でも、一定水準の完成度なら問題ないという考えが強くなって、構造化という言い方が優勢になった印象があります。

体系化と構造化の違いよりも、設計図になっているかどうか、そこが問題です。構造が安全なら、一部の部品が足らなくても、問題ないという考えです。ただし、これは比喩的な言い方ですから、安全にあたるものを、個別具体的に検証する必要があります。

 

2 体系化・構造化の前提条件:領域設定

設計図を作るときの、最初の条件は、領域設定です。構造化というときに、領域設定をすると言うと、意味がわからないという方もいらっしゃいます。しかし、家を建てるときに、土地の領域が決まらずに、設計することはありえません。それと同じです。

体系化・構造化するときに、最初に領域を決める必要があるのです。例えば、「日本を変える」では概念が不明確で、構造化・体系化が難しいでしょう。そこで、設定を変えることになります。このセンスが大切です。「日本の福祉を変える」でもまだ広いでしょう。

「この組織の福利厚生制度を変える」なら領域設定になりそうです。この変更を通じて、日本の福祉を変え、日本を変える、という問題設定になります。問題提起が大切だと言うとき、問題の設定領域が適切であるかどうかという点も、当然問われます。

具体的な検証ができる形式で問題を設定しないと、適切な解答がなかなか得られないと言うことになります。領域設定の目的は、土俵を制限することで、全体構築になっているのかどうか、十分な強度の柱がそろっているかどうか、検証することにあります。

体系化・構造化という場合、そこには検証という過程が必須になります。体系性があるといわれながら、検証できない体系では有効性がないということになります。まずは、領域設定が必要であるということです。

 

3 仮説の検証:2つの方法

概念の体系化・構造化をする場合、二つの要素が必須になります。ひとつは体系を構成する要素です。いわゆる部品です。もう一つは、その部品を組み立てる設計図です。部品ごとの関係性を示し、全体を統合する全体構造になります。

これらを構築するときに、原則として個々の断片から探っていくことになります。断片というのは、重要部品です。家で言うなら柱に当たります。複数の重要な部品がどういうものであるのかを手がかりに、全体を構築していくことになります。

構築した全体像は、仮設計でしかありません。仮説を検証する必要があります。仮説の検証は、体系化・構造化するときに必須の過程となります。仮説にゆさぶりをかけて検証するということです。検証には、おもに二つの系統があります。

まず最初になされるべきことは、「仮説自体に矛盾点や脆弱性がないか」という面からの検証になります。この検証の場合、自ら選んだ部品の適切性の審査から仮説の検証ができます。仮説がありますから、部品の適不適がわかります。そこからはじめられます。

部品の中に、不要なものがあったり、不足するものがあったなら、それを修正しなくてはなりません。その修正に伴って、仮説が維持できるかどうかという点が検証になります。部品を確認する過程で、設計変更の可能性が出てきます。

もう一つの検証は、仮説をひとまず消して検証するものです。もう一度、別体系を作ろうと試行することです。領域の中に、部品をそろえて設計した人が、同じ土地に、もっとよい家が建てられるのではないかと、もう一度再設計することです。

一度できた設計を詳細に見直しても、その設計自体の価値はなかなか判断できません。そこで、いったんオールクリアにして、ゼロからもう一度、仮説を立てることになります。これを意識して行うことで、両者の仮説が検証できるようになります。

大切な仮説の場合、これら2つの検証を行う必要があると思います。このとき、二つの仮説を並べて見て、どちらがより適切な体系であるのかを判断することになります。このときの判断の原則は、シンプルなほうがよりよいというものです。

以上が、私の考える構造化・体系化、あるいは設計というものです。これが文書の基本になると考えています。