■文章の設計図づくり:ビジネス文書の練習

 

1 ビジネス文書の練習に必要な設計図づくり

ビジネス文書を書くときに、文章の設計図が必要になります。梅棹忠夫、清水幾太郎といったきちんとした文章を書く人たちも、文章は設計図にそって書いていくのだと言っています。では、具体的に、どうやって設計図を作る練習をしたらよいでしょうか。

梅棹忠夫も清水幾太郎も、亡くなったいまでも著書が読まれています。ただの学者でなくて、できる学者だったということでしょう。残念ながらお二人とも、具体的な練習方法について書いていません。

いままでの経験から、設計図づくりを身につけるのに効果をあげた練習をご紹介します。そんなに特別な方法ではありません。ただ継続することが必要です。基礎訓練というものは、すべてそれなりに大変です。継続することがあんがい大変かもしれません。

昨年、文書担当の方から、「少数で十分です、いま一人もいませんから」と言われたことがあります。継続できた方は飛躍します。素材は、新聞の社説です。ありがたいことに、いまはWebに公開されています。簡単に読むことができます。

 

2 設計図づくりの練習法

具体的な練習方法をご説明します。まず、素材を選びましょう。1週間に1回やれば何とかなりますので、ご自分の気に入った社説を見つけましょう。何社も新聞社がありますし、何日分もずらっと並んでいますから、その中から選べばよいでしょう。

私の講義では、日経新聞の社説を使っています。同じテーマの社説を読み較べて見て、自分との相性を見るのもよいかもしれません。素材は、自分でこれは良くできていると思う文章が効果的です。

社説は、新聞社にとって大切なものです。そのテーマについて詳しい人が書いていますし、書いた人以外のチェックが入っていますので、おかしな文章は、ほとんどありません。一定レベルが確保されていますから、自分の好みを優先して問題ありません。

要約を1回だけするのではありません。同じ素材を使って、3つのステップを踏んでいきます。1段階ごとにレベルを上げていきます。

第1段階:重要な部分に線を引きます。だいたい3分の2の分量になるようにします。
第2段階:線を引いたところをもとに、構成メモを再現していきます。
第3段階:構成メモで全体の論旨を押さえた上で、100文字の要約にします。

時間は1時間くらい、あるいはもっとかかるかもしれません。慣れないうちは、自分で文章を書くくらい苦労するかもしれませんが、3ヶ月くらい継続すれば効果が出てきます。以下、いくつか注意点を書いておきます。

 

3 練習についての注意点

第1段階では、自分の言葉を加えずに、3分の2の要約にしていきます。線を引いた部分をつなげると文章になるように、ときには文を切り刻むことをしながら、線を引いていきます。3分の2にしても、情報量はあまり変わりません。重要部分は残ります。

重要部分が適切につかめていたか、その確認作業になるのが、第2段階です。3分の2になった要約文をもとに、筆者の構成メモを再現する作業をします。社説の構造がどうなっていたのか、この作業をやってみると、見えてきます。

だいたい2つか3つかの構造に分かれます。その下に、2つか3つの項目が並びます。[1 (1) (2) /2 (1) (2)①② (3) ]…といった構成になるはずです。構成メモを再現すると、社説全体の論旨が見えてきます。

論旨がきちんと見えていたら、社説は100字でまとめられます。ポイントのずれない要約になっているはずです。うまく要約できると、自分でもわかるものです。何だかおかしいというときは、その前の構成メモの再現があまいということです。

構成メモを見直してもおかしい場合、最初の3分の2の線引きが適切でなかった可能性があります。こういうときは、最初の線引きからやり直しです。最終的に、100字のひと言まとめがきちんとできたら、この練習はうまくいったということになります。