■「…ですが」考:日本語のバイエルの考え方

1 「…ですが」という言い方

講義のとき、ときどき聞かれることがあります。たいていこんな風です。「逆説以外の『が』を使うな、と言われるのですが、全く使わないと逆に困るときがあるのですが、どうしたらよいでしょうか」。何だか、おもしろいですね。

会話のとき、知らないうちに逆説でない「が」を使うことは、めずしいことではありません。この質問の場合、まさに「が」の使い方を聞くときに、「…ですが」「…ですが」と、無意識のうちに使っているのですね。あるときから意識するようになりました。

質問にある「…ですが」といういい方はよく使われます。メールでも、しばしば同種の表現を目にします。「次の会合ですが、第1会議室にしたいと思います」といった文をご覧になったことがあるはずです。

この「…ですが」といういい方を、会話で使うなら問題ないでしょう。メールでも、相手とのやり取りですから、誤解を生じることがないと思います。この言い方自体、会話に近いときに使われるものです。問題となるのは、書き言葉の場合でしょう。

先の例文の「次の会合ですが」という言い方をみたら、たしかに直したくなりますね。どう直すのが適切でしょうか。それを考えるために、「…ですが」という言い方が、どういう表現なのか、考えて見たいと思います。

 

2 「…ですが」を主題提示に使う事例

まず気がつくことは、例文の場合、簡単に書き換えが可能であるということです。「次の会合ですが、第1会議室にしたいと思います」とあったら、「次の会合は、第1会議室にしたいと思います」に言いかえが可能です。

「次の会合ですが」「次の会合は」は、ともに【主題】をあらわす表現ということになります。しかし、述語の【主体】にはなっていません。誰が「思います」…なのでしょうか? 文を書いた人です。したがって、「次の会合」は、主体ではありません。

文を書いた人が主体であり、その人が「次の会合」に焦点を当てた言い方です。したがって、「次の会合を、第1会議室で行いたいと思います」…と直したくなります。主体でないものに「は」をなるべく接続させたくないのです。

助詞「は」は主題(テーマ)に接続する、としばしば日本語の文法の本で説明されています。間違いではありません。問題は、この説明が適切かどうかです。不適切だと思うのです。主体でないものに、「は」をつけないほうが明確な表現になるからです。

「次の会合を」なら、「会合」が主体であると誤解する人はいないでしょう。さらに、助詞の「を」は、行動に結びつくものと親和性がありますから、ここでは、次の会合を「~する」よりも「行う」にしたほうが、明確な表現になります。

 

3 「AしかしB」という形式

それでは、先にあげたご質問の言い方は、どう表現すべきでしょうか。「言われるのですが」、「あるのですが」…と「ですが」の続く言い方を文にすると、わかりにくくなります。まず、「ですが」を「は」と言いかえてみましょう。何かが見えてくるはずです。

「逆説以外の『が』を使うなと言われるのは、全く使わないと逆に困るときがあるのは、どうしたらよいでしょうか」となります。かろうじて、意味がとれます。しかし、わかりにくい表現です。

「は」に変えてしまうと、両者が主題扱いになります。「逆接以外使うなといわれること」と「使わないと困ることがあること」という2つが、主題扱いされます。主題が2つ並べられたら、わかりにくくなるはずです。しかし、実体は違うようです。

本来、「AしかしB」という形式の内容だったはずです。「使うなといわれるが、しかし、使わないと困る」という形式にすれば、わかりやすくなります。「…ですが」「…ですが」と同じ言い方を続けてしまったため、並列のように見えたということでしょう。

逆接の接続詞は、「AしかしB」という対立概念が並ぶ形式のときにこそ、効果的です。先の質問の表現も、前の「ですが」は逆説で、後の「ですが」はただの接続の役割を果たしているにすぎません。「AしかしB」で切ってしまえばよいのです。

まず逆接を意識してください、ということになります。以下なら、わかりやすいはずです。「逆説以外の『が』を使うなと言われますが、しかし、全く使わないと逆に困ることがあります。どうしたらよいでしょうか」。

 

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