■「TPO」という読み書きの武器、その由来

▼「TPO」はメイド・イン・ジャパン

先日、読解の講義をしてきました。私の講義の場合、読解にTPOの概念を取り入れます。受講される方が大学生だったので、TPOをご存じかどうか、聞いてみました。やはりというべきでしょうか、知っている人は、2割に満たない数でした。

TPOという概念は、今では伝説的な「VAN」創業者の石津謙介が考えた概念です。1963年、日本メンズファッション協会が石津の提案を採用してキャンペーンをした結果、TPOという言葉が普及したとのことです。

ユニクロの柳井正会長の父親は、元VAN専門店の経営者でした。柳井会長は「カジュアルウエアに親しむきっかけは、VANだった」と書いています。メーカーズシャツ鎌倉の貞末良雄社長もVAN卒業生です。現在、おおぜいの関係者が活躍しています。

TPOについて、石津自身が語っています。

「TPO」。「T(タイム=時)」「P(プレイス=場所)」「O(オケージョン=場合)」を考えて、ふさわしい洋服を着ようという提案です。 [読売ぶっくれっと「時代の証言者」44]

ファッションについて考え出された日本発の概念が、そのまま文章の読み書きにも使えます。

 

▼「TPO」の原点

なぜ、石津はTPOという概念を思いついたのでしょうか。本人の言葉を聞きましょう。

僕には池辺陽(きよし)や宮脇檀(まゆみ)といった建築家の友人がいて、彼らから、「誰のために何をどんな手順でするか」という、明確な目的意識ときめ細かな計画性を学びました。ファッションも同じで、誰のために装うか、考えることが大切でしょ。
それで、文章をつづる時の「いつ・どこで・誰が・誰に・何を・どうした」を表す「5W1H」を参考にして、語呂のいい「TPO」にしたのです。

TPOのもとが5W1Hですから、TPOが文章の読み書きに使えるのは、あたりまえかもしれません。すでに「自分が、服を着る」という基本行動は決まっています。そのとき考慮すべき概念を明確にすると、TPOになります。

5W1Hを、そのまま文章の読み書きの基準に使うのは、あまり合理的ではありません。まず基本行動にあたるものを決めます。文法で言うと、必須要素(必須成分)ということになります。「誰が・誰に・何を・どうした」です。

これを決めた上で、「いつ・どこで」だけでなくて、「どんな場合」を考えるということになります。文章の読み書きの場合、この二段階の確認・分析をすると、わからないところがわかってきます。どう書いたらよいのかも、わかってきます。

 

▼「TPO」は必須の武器

文章を読み書きするときの道具立ては、必須要素とTPOで十分です。ファッションを考えるときの概念が、文章を書くときの概念から発想されて、その概念が、逆に言葉を読み書きするときの重要な武器になっています。

必須要素を確認するときの道具は3つありますから、TPOと合わせて4つの道具を使えば、こと足ります。必須要素の3つの道具とは、「主体」「焦点」「述部」です。私が提唱する「日本語のバイエル」では、これらの道具で、読み書きを検証していきます。

必須要素の中でも、中核となるのが、主体と述部の関係です。主体と述部は、対応関係になっています。この中核を判別公式で確認して、文章のピントが合っているのかをチェックします。ずれた主体を立ててしまうと、文章はぶれます。

必須要素があれば、文の基本は決まります。しかし、TPOなしの文だけでは、物足りません。TPOなしの文は、まさに裸のままの文です。そこに服を着せることで、社会性を持った文になります。TPOの概念は、文の読み書きを考える際の必須の武器になります。

 


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