■発想法について:KJ法をご存知ですか

▼KJ法の利用

講義にいらした方に、KJ法をご存知ですか、とお聞きすることがあります。かつて、かなり使われていました。その後、下火になりましたが、2000年を超えてから一時復活した感じもありました。

文書関連の講座の受講者ですから、一般的な方よりも、KJ法をご存知の割合が多いはずです。ところが、いまでは若いビジネス人の9割ちかい人が、KJ法を知りません。昨年、今年の講座で、ご存知の方が3割を超えたことはありません。

リーマンショック前まで、それなりに使われていました。KJ法の使い方は、だいたい決まっていました。会議のときに、出席者がいっせいにポストイットにアイデアを書き出し、ホワイトボードに貼りだして、グループ化し、解決策を決めるというものでした。

これでは、あまりうまく行かないはずです。その辺を考えてみたいと思います。

 

▼問題に対する理解が決め手

KJ法は、川喜田二郎の『発想法』で紹介された手法でした。KJはイニシャルです。著作集で『発想法』を紹介したフレーズは、「混沌をして語らしめよ」でした。川喜田は文化人類学者で、ネパールでのフィールドワークのときに、その原型が作られたようです。

フィールドワークのときに、たくさんの資料をノートにまとめた川喜田は、そのデータをどうしたらよいか悩んだようです。リーダーの西堀栄三郎に、どんな記録が大切なのかと問うたところ、全部だという答えが返ってきたそうです。

川喜田は、ノートの記録をカード化して並べていくうち、あちらとこちらで関連性があるものが見つかって行き、さまざまな展開を見せていくことに気づきました。そこから、何かを考えるときの手法になると思ったようです。これがKJ法の原型です。

川喜田の本の題名が『発想法』となっているように、アイデアを生む方法として使われはじめました。もともとがフィールドワークの手法であり、科学的なものではありません。発想を生み出すものです。

したがって、生み出される発想の質を決める前提条件があります。その問題に対する理解や知識、洞察力のあることが前提となっています。それなしに、思いつきの数を多く出したところで、特別なアイデアは生まれません。

 

▼素材・断片を一覧できることが重要

KJ法を使った場合でも、何かをふと思いつくまでの時間が必要です。時間の限られた会議で使っても、特別な発想は生まれません。KJ法を時間管理の手法として使ってしまったことは不幸でした。

いつでもそうですが、問題に対する理解が重要です。それを深めることなしに、何か特定な手法を使っても、効果は期待できません。一定時間に一定の成果を出すためには、その対象に対する知識が前提になります。

さまざまな素材から関連性を見出すことは、発想の基本となるはずです。用紙に一覧を作るなりカードにするなり、手法はあまり問われません。大切なことは、必要な素材、断片が、見えるようになっているということです。

アイデアは書かないと忘れてしまいがちです。自分の思いついた考えや、大切だと思ったデータでも、書かれたものがあると、判断するときの助けになります。その対象のことがよくわかっているなら、一覧があれば関連性を見出しうるはずです。

何らかのまとめやアイデアを出すには、(1)対象となるものをきっちり理解すること、(2)全体を俯瞰する資料があること、この2つが重要だろうと思います。

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