■業務システムの目的:ウィナー「サイバネティックス」を参考に

1 業務システムと定型的作業

業務システムがない仕事は考えられないくらい、システムが各業務に入り込んでいることと思います。それでは、何のためにシステムはあるのでしょうか。とても原則的なことですが、意外に専門家の方でも、すぐに答えが出ないことがありますね。

言われれば当たり前だろうと思います。業務が形成されてくると、その中には、反復して行う定型的な作業ができてきます。そうした作業は、人間がやり続けるよりも、システムに任せられるなら、その方がよいでしょう。何度も何度も計算を人間がするよりも、業務システムの計算機能を使った方が、正確で速いでしょう。

私達は、定型的な仕事をシステムに任せることで、もっと人間ならではの仕事ができるはずです。その目的のために、業務システムが導入されているはずです。システムは、たいてい決められたことをきちんとしてくれます。しかし、簡単な数学の証明さえ、できません。システムの強いところを利用しないといけないということでしょう。

 

2 システム導入の判断基準

業務システムを導入する際には、業務の洗い出しをすることになります。業務フローを作ることが原則になります。業務フローを作る目的は、業務の全体像を見えるようにするためです。全体が見えてきたら、詳細に各業務を分析することができるようになります。

フローの作成をしたら、各業務の中のどの部分に、どういう形で業務システムが組み込まれているのか、確認作業が必要になります。各業務にとって、人間とシステムのそれぞれ何が必要なのか、把握することが大切です。

この辺が見えるようになってくると、一気に業務が立体的に見えてくるようになります。人間がどうしてもやらなくてはならない業務と、システムに任せられる作業の仕分けができます。この仕分け作業の中から、新たにシステム導入をすべき部分も見えてくるはずです。

 

3 人間機械論:人間の人間的な使い方

ノーバート・ウィーナーは『人間機械論』を書いています。人間は機械であると論じた本のように見えますが、原題は、“THE HUMAN USE OF HUMAN BEINGS”というものです。何となく逆のニュアンスが感じられます。たぶん「人間の人間的な使い方」というほどの意味だろうと思います。

ウィーナーは、「サイバネティックス」というフィードバックを組み込んだ仕組みの提唱者でした。この考えは、①行動を起こし、②その結果が目標とどのくらいずれているかを測定して、③その結果に基づいて行動を修正していく、というサイクルをとることによって、成果が上がるという考えです。

最初から、目標に命中するように、事前にすべてを計算しつくすなどということは、まずできません。徐々に修正しながら進めていく方が効果的です。こうしたフィードバックを組みこんだサイクルを提唱する考えですから、情報システムの基礎にもなっているはずです。

行動を起こし、それを修正して行動するのは人間です。修正するために情報が必要です。どんな情報を提供してくれるのか、それがシステムに求められています。その前提は、人間が主役であると言うことになります。

業務マニュアルでも、業務システムの操作マニュアルでも、作成のときに一番の基礎となるのは、「人間の人間的な使い方」を明確にすることです。これを忘れてしまうと、人間が使ってくれるマニュアルになりません。

 

 

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