■テクニックよりも大切なこと:コツの習得

   

1 古谷昇『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果を上げる法』

本の山から古谷昇の『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果を上げる法』が出てきました。ずいぶん前に読んだ本ですから、いつ出版されたのだろうと見てみると、2004年です。もう内容も忘れてしまっていましたが、だんだん思い出してきました。

「はじめに」の最初に、苦労なしに仕事がうまくいく人と、苦労して何とか回している人がいると書かれています。ところが[多くの本は、二番目のグループで生き残るための精神論や手法に終始したものが多い]と続き、私は一番目の人間だというのです。

世の中の一般的な関心がずれているということでしょう。かつて雑誌からインタビューを受けたことがあったそうですが、せっかくの取材でしたが、古谷のパートはその雑誌になかったとのこと。それはそうでしょう。読まれる内容とずれていたからです。

      

2 二番目グループ向けの話

古谷は言います。[彼は私から、スケジュールの立て方とか、アポの入れ方といった、テクニック的なノウハウを聞きだしたかったのに、その手のものに関しては私が何も特別なものを持ち合わせていなかった]。二番目のグループの人向けの話をしなかったのです。

それでは何か大切なのか。古谷は「コツ」を身につけることが大切だと言います。[コツとは何で、コツを身につけるためのノウハウや使い方]が大切なのです。トップに立った古谷も[入社時は並みか、その下くらいからのスタートだった]と記しています。

[人のあらゆる活動に関するノウハウには、どうやら次の三つのレベルがある]といって、3つを上げています。①意気込みでやる、②手法、テクニック、知識でやる、③コツでやる。②がいわゆる二番目のグループの求めるものだということです。

     

3 肝心なコツだけを教えること

古谷は跳び箱が飛べるようになるために、どうしたらよいかという例を出します。[飛べない子に「助走」「踏み切り」「手をつく位置」などとステップを分解して、いちいちテクニックを教えるのは利口なやり方ではなかった。正解は、肝心なコツだけを教える]。

いうまでもなく、いきなりコツから入れるわけではありません。跳び箱を知っていること、すでに跳び箱を飛んだことがあること、こうしたことを前提としています。だから知識が必要でないとは言えません。しかしその知識はたいした量ではないのです。

ポイントになるのは、コツを教えているかどうかということになります。もし何かの分野で、一気に上達した経験がある人なら思い起こすはずです。あるとき、何かがわかったということがあったでしょう。それはコツと言われるものだと思います。

一定レベルを超えた領域で何かを成そうとするとき、最重要なことはコツの習得です。古谷は、70点を80点にではなく、40点を70点にする方法がコツだと言っています。これはOJTマニュアル講座の大切なポイントです。この本の影響もあったように思います。

      

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