■目的・目標・手段と真善美

    

1 目的・目標・手段で考える

マネジメントの基本として、目的・目標・手段という概念があります。マネジメントの本には、ここまでシンプルには書かれていないかもしれません。しかし原則はこれです。この発想を身につけておく必要があります。業務を構築するときにも不可欠です。

ドラッカーの『マネジメント』でも、目的の項目のあとに目標が来て、さらに計画の項目がきます。3つの概念は階層構造になっています。最上位の概念が目的であり、次が目標、その次が手段です。一つの概念が明確になると、他のものが決まります。

これらを明確にする訓練はあまりなされていません。しかし価値のある訓練になるでしょう。ただしシンプルなことだけに、かえって難しいところがあります。3段階の構造になっているため、その形式で考えていけばいいのですが、基準がわかりにくいのでしょう。

    

2 目的は主観的に、目標は客観的に

目的というのは動機につながっています。利潤を動機とすることを、リーダーは嫌いがちです。ビジネスを長続きさせるためには、効果的でないからかもしれません。豊かさを生むための動機は、どんなものであるべきか。目的の性質から考えるのがよさそうです。

目的というのは主観的に決まります。自分の思いが基礎になり、これを詰めていくと目的になり、それがついにリーダーの哲学にまでなるでしょう。一方、目標の場合、客観的であることが必要です。達成を検証する必要があるため、客観的な基準が必要になります。

哲学の場合、目的と手段で考えるのが原則です。科学の場合、目標と手段で考えます。両者の違いは、目的と目標の違いと言えるでしょう。哲学の場合、価値観を基本に置きますが、科学の場合、主観を排除することが原則になります。この違いが大きいでしょう。

目的は主観的に決めるしかありません。目標は客観的なものです。達成の有無を検証する明確なゴールを必要とします。主観的に目的を決め、客観的な目標を設定し、達成の手段を決めるのです。どんな手段をとるべきか。その決定には、合理性が不可欠になります。

     

3 真・善・美で考える

主観的、客観的、合理的と言われても、やはり簡単ではありません。少し前から補助線として、真・善・美というのがヒントになるかなと思うようになりました。動機が善かどうかを問うのは、稲盛和夫が提唱しています。わかりやすくて効果的な指針です。

手段が合理的であるかどうかは、手段が真実であるかどうかということになります。真実であるというのは仮説として真実性があるかどうかということです。理由づけが明確で合理的かどうか。確率性を勘案して採るべき具体策を決めていく必要があります。

目的は善かどうかで考える、手段は真かどうかで考えるのです。目標を考え場合には、明確で調和がとれているどうか、美しいかどうかが問われます。美は絶対的な水準の高さが不可欠ですが、その上で数あるものの中から相対的に判断すべきものです。

目標を客観的にするためには、選択肢を作って、その中から選択する必要があります。一番美しいものを選ぶという意識があれば、目標設定の指針になるはずです。ときどき「主観的・客観的・合理的」「真・善・美」を思い浮かべて考えるのがよいかもしれません。

      

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