■日本語文の文法分析:TPOがポイント

     

1 文を体言化した主役

日経新聞の社説を素材にして、日本語文の文法分析を試みています。前回、【緊張が高まるウクライナ情勢について平行線に終わったが、それぞれの担当者が継続して協議することで一致した】…がどういう構造になっているのかを見ました。その次を見てみます。

▼米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領がオンライン形式で協議した。緊張が高まるウクライナ情勢について平行線に終わったが、それぞれの担当者が継続して協議することで一致した。
両国が話し合いで解決を目指す姿勢を示したことは前向きな兆候だ。一時的とはいえ緊張が和らぐ効果があったことは歓迎する。
問題はこれを契機に和平につなげられるかどうかだ。

【両国が話し合いで解決を目指す姿勢を示したことは前向きな兆候だ】。主役は【両国が】ではありません。【両国が話し合いで解決を目指す姿勢を示した】+【ことは】という形式によって文が体言化されて主役になっています。文末は【前向きな兆候だ】です。

【両国が話し合いで解決を目指す姿勢を示した】という文形式にも少し触れておきます。【解決を】【姿勢を】と「~を」が重なっていますが、これは【解決を目指す姿勢を】となって【姿勢を】が骨組みです。「両国が・姿勢を・示した」の構造になります。

     

2 「は・が」があっても主役にならない場合

続く文を見てください。【一時的とはいえ緊張が和らぐ効果があったことは歓迎する】となっています。「緊張が/~効果が/あったことは」と何だか「主語がどれか?」という感じの文です。しかし文末は【歓迎する】なので、誰がが歓迎しているのでしょう。

「緊張が/効果が/あったことは」のすべてがセンテンスの主役にはなりません。このセンテンスの主役のことを主語と呼ぶのなら、私のいう主役と同じものです。通説はどうやら違った概念のようですから、ここでは主役としておきます。主役は誰でしょうか。

「日本」なのか…と言えば、どうも筆者が勝手に日本を代表するのでもなさそうですから、「筆者は…歓迎する」なのでしょう。「筆者は・…を・歓迎する」の形です。つまりは【緊張が和らぐ効果があったことは(←を)】ということになります。

「緊張が和らぐ効果があったことを・歓迎する」と「緊張が和らぐ効果があったことは・歓迎する」では、どう違うのでしょう。たぶん後者に「効果があったことだけは」というニュアンスが感じ取れるはずです。今回は全体的にNGという中でのことでした。

    

3 助詞「は・が・を・に・で」がヒント

最後のセンテンスも見ておきましょう。【問題はこれを契機に和平につなげられるかどうかだ】の文構造はどうなるでしょうか。【問題は…どうかだ】ですから、主役は【問題は】となりそうです。残りの部分をどう考えればいいかということになります。

【これを契機に和平につなげられるかどうかだ】の構造はどうでしょうか。助詞「は・が・を・に・で」がヒントになります。【これを/契機に/和平に/つなげられるかどうかだ】なので、【これを契機に/和平につなげられるかどうかだ】になるはずです。

【これを契機に(して)】、【和平につなげられるかどうか(が問題)だ】となります。TPO+文末の構造です。TPOと文末が対応関係になっています。前回も「緊張が高まるウクライナ情勢について」が「Aの点で」というTPOになっているのがポイントでした。

    

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