■日本語文の文法分析:文構造を理解するための4つの要素

    

1 筆者の主張の実質的な内容

今回も日本語文の文法分析をしてみましょう。2021年12月8日の日経新聞社説「米ロはウクライナ緊張緩和へ対話継続を」を使います。社説の最初には、大切な内容が置かれるのはご存知でしょう。新聞記事では、文章の最初のブロックをリードと呼び重視します。 

▼米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領がオンライン形式で協議した。緊張が高まるウクライナ情勢について平行線に終わったが、それぞれの担当者が継続して協議することで一致した。
両国が話し合いで解決を目指す姿勢を示したことは前向きな兆候だ。一時的とはいえ緊張が和らぐ効果があったことは歓迎する。
問題はこれを契機に和平につなげられるかどうかだ。

これを読んで、筆者の考えがどうであるか明確になったでしょうか。初めに事実関係が記されています。米ロで協議をしたのです。さらにその結果を記しています。筆者は、前向きな兆候として歓迎しています。これが本当の和平につながるかが問題だと言うのです。

前向きな兆候ではあるものの、どうなるかわからないということでしょう。筆者の考えがないのです。最初の文は事実を記しています。【米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領がオンライン形式で協議した】。このセンテンスから見ていきましょう。

     

2 センテンスの前後で対比した内容を記す構造

このセンテンスは「誰と誰が、どんな手段で、どうした」という構造になっています。主役となるのは【米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領が】、TPOになるのは【オンライン形式で】、文末は【協議した】になります。これはそう問題ないはずです。

しかし、次の文では引っかかる人がいるかもしれません。【緊張が高まるウクライナ情勢について平行線に終わったが、それぞれの担当者が継続して協議することで一致した】。このセンテンスは、どんな構造であるか、少しだけ気をつける必要があります。

助詞「が」が3つ使われていますが、主役になる言葉は記されていません。このセンテンスは2つに分けられます。【緊張が高まるウクライナ情勢について平行線に終わった】と、【それぞれの担当者が継続して協議することで一致した】…です。

ともに主役となる言葉は「協議は」になります。前の部分で「協議は」【平行線に終わった】と記し、そのあとに続く部分で「協議は」【一致した】という構造です。「Aの点で協議は不一致、Bの点で協議は一致」と、前後で対比した内容を記しています。

     

3 [TPO+主役+文末]+[TPO+主役+文末]

【緊張が高まるウクライナ情勢について平行線に終わったが、それぞれの担当者が継続して協議することで一致した】。この文を文法的に分析するとは、主役、補足、TPO、文末の4つの要素がどうなっているかを明確にするということです。以下を見てください。

TPO : 緊張が高まるウクライナ情勢について
主役:[協議は]
文末: 平行線に終わった …が、
主役:[協議は]
TPO : それぞれの担当者が継続して協議することで
文末: 一致した

「Aの点で・Bの点で」のところがTPOの要素になります。主役はともに「協議は」です。【平行線に終わった】と【一致した】という対照的な意味内容が並びます。4つの要素を使って日本語文の構造を見ていけば、文意を正確に理解できるようになるはずです。

     

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