■業務マニュアルを作る目的について:「MUJIGRAM」というマニュアル

     

1 「MUJIGRAM」を導入したかった中国人

無印良品が「MUJIGRAM」というマニュアルを作り始めたのは、松井忠三が社長のときでした。『無印良品は、仕組みが9割』という本にまとめられたので、ご存知の方もいらっしゃると思います。その後、マニュアルは発展して現在も使われているようです。

数年前どうしたわけか、中国と日本の貿易のサポートをする会社から中国の製造工場で「MUJIGRAM」を導入したいので指導をお願いしたいという話がありました。社長が『無印良品は、仕組みが9割』を読んで、これを導入したいと言ってます…とのことでした。

通訳をつけてくださるということでしたが、中国本土のやや内陸にある工場での指導になりますから無理がありますし、実際のところ日本でしか成果が上がらないと思いました。それとなくそんな話をして、その先に進みませんでしたが、しかし驚きました。

無印良品は中国では知られたブランドになっているのでしょう。無印良品の成功の背景に、「MUJIGRAM」があると考えたようでした。その点、おそらく間違ってはいません。しかし日本では、現場で提案をする人が普通にいますが、これは特殊なことです。

     

2 有利な条件にある日本の現場

PRESIDENT online(2021/11/29)に「すべてのページは読み切れない…無印良品が2000ページのマニュアルを作る本当の理由」が載っています。マニュアルという言葉にはネガティブなイメージがあるため[MUJIGRAM、業務基準書と呼ぶことにしました]とあります。

ネガティブなイメージがあるという理由からなのか、日本ではマニュアル作りをしていません。しかし日本人の働く職場はマニュアル作成に向いています。圧倒的に有利な条件にあるのに、仕事を標準化してマニュアルに記さないのはもったいないことです。

ここで松井忠三は、[MUJIGRAMも業務基準書も、目的は「業務を標準化する」ことです]と記しています。[組織の未来のためには属人化ではなく、標準化するのが最善の道でした]とのこと。医療は標準化によって発展しました。典型的な成功事例です。

     

3 マニュアルを作る側に回る

PRESIDENTonline(2021/11/29)の記事は、松井忠三著『無印良品の教え』を編集したものだとあります。ここに載っている部分だけでも、大切な指摘がいつくもありました。スタッフが本部に質問しても、MUJIGRAMで確認して…ということになるそうです。

これはマニュアルが機能している証拠でもあります。マニュアルを機能させるためには、作る側に回るということが不可欠です。[マニュアルに従うのではなく、「マニュアルをつくる人」になれば、自然と自分の頭で考えて動く人材になります]とあります。

さらに[それぞれの業務を何のためにするのかという「目的」を確認することは大事です]。[マニュアルは日常的に、そこに書かれてある業務を通して組織の理念やミッションを浸透させる効果があります]。まさにマニュアル総論のようなお話です。

以上だけでも、マニュアルの重要性が感じ取れるでしょう。ただし『無印良品は、仕組みが9割』のときのように、ではどう作るのだと思う人がいるはずです。実際、そういう人がいない限り、マニュアル作成などはじまりません。作成は簡単ではないのです。

      

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