■業務マニュアル作成の指針:マネジメントと公法

     

1 コンサルタント・チームが失敗した案件

業務マニュアルの作成を教えることになったのは、偶然のことでした。上場企業で業務マニュアルの作成がお手上げ状態になっていたのです。世界的なコンサルティングファームへ依頼したのに、なぜか解決できなかったのでした。不思議なことがあるものです。

会社は勝負をかけていただろうと思います。コンサルタントのチームがやってきて、作成に取りかかったのですから、何とかなるはずでした。ところが数か月たったころ、使えないことが判明します。その後、何度か改定したものの解決しませんでした。

ジャスダック上場で、ちかく東証一部上場という伸び盛りの会社です。メーカーのように業務マニュアルを整備すべきだと社長さんが考えたようでした。この会社の役員と知り合いだったボスの片貝孝夫はなぜか、それならできるのがいると考えたようです。

      

2 あてはめ式の流し込み作業

作成チームが実効性のある業務マニュアルを作れなかった理由は簡単です。作成の指針がないからです。すでに出来上がったひな形に、会社の現状を聞きとって流し込む作業をしただけでした。根本からの作成ではなくて、あてはめ式、流し込み作業の仕事です。

そのように作った痕跡がいくつも残っていました。詳細はここでは語りません。一つだけその例をあげます。各部門で使われているキーワードが統一されていなかったのです。ある用語に関して、4種類の言い方が、そのままマニュアルに載っていたりしました。

ウソのようですが、この種の基礎的な確認がなされていなかったのです。作成者は、おそらくマニュアル作成の基礎訓練を受けたことがなかったのだと思います。さらに不思議なことに、総計9カ月の間に一番の基本点をチェックする人がいなかったのです。

業務マニュアルを作成するための作成の指針、いわば作成者用のマニュアルがなかったのでしょう。ただしここで言うマニュアルの内容は、業務マニュアル用の独自の作成指針ではありません。すでに成熟した学問の基本発想がほとんどそのまま使えるのです。

     

3 指針となる学問:マネジメントと公法

業務マニュアルの内容をどうするか、ルールづくりをどうするか、それらが問題になります。記述内容を考えるには、マネジメントの発想と合致させることが不可欠です。マネジメントの視点で考えるからこそ、適切な業務の仕組みを作ることができます。

ルール作りの方法はどうでしょうか。こちらにも参考になるモデルがあります。憲法や刑法などの国家と国民の関係を規定する公法の発想です。業務マニュアルは組織と個人(担当者)との関係で成り立ちますから、公法の構造がほとんどそのまま使えます。

業務マニュアルを作成するとき、マネジメントの発想で業務を考え、公法の構造を参考にして仕組みにしていくことが役に立ちます。当然ですが、その都度、組織ごとに基本から考えなくてはなりません。面倒なことでしょう。しかし結局このほうが早いのです。

     

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