■在宅勤務を心配する幹部たち:プロフェッショナル人材の育成

   

1 在宅勤務の長期化にはリスクがある

新型コロナの影響で、組織での働き方が大きく変わってきました。ビジネス人向けの研修も、Web対応が多くなっています。選択肢が広がったのはよいことです。在宅勤務の拡大によって、今後の日本の組織の在り方が変わってくることは間違いないでしょう。

ときどき在宅勤務を良しとして、年齢の上の人が在宅を嫌がっているというニュアンスの記事があります。しかし実態は違うようです。幹部クラスの人たちとお話ししてみると、在宅勤務を継続させていたら成果が低下するリスクが大きいと、心配しています。

若手の実力がつかないことを懸念しているのです。IT企業などでは、在宅勤務との相性が良いらしくて、出勤がひと月に1回というところもあります。ところが、それを継続していく中で、あまりに個人差が大きいのに愕然とすることがあるようです。

     

2 一人での仕事ばかりでは飛躍できない

日本では現場、現場という人たちがいました。あまり理論的ではなかったですから、バカバカしいと思っていたいた人もいたはずです。実際その後、日本企業はかつてほど強くなくなりました。現場主義は間違いだったという言い方も成り立つのかもしれません。

とはいえ現場での仕事は必要不可欠なままでしょう。当然、製造業とサービス業では違いますし、IT産業だともっと大きく違うはずです。しかしいずれの仕事でも、人間が能力を飛躍させるときに、一人で仕事するばかりでは大きな成果は期待できません。

一人で仕事をするなら邪魔されずに集中できますから、よい面があることは確かです。同時に刺激が少なくて、想定される目標値を超えにくくなります。そして全体のレベル低下を幹部の人は気にするふりをしていましたが、本音はたぶん別にあったはずです。

プロフェッショナル人材というのは、そんなに大勢はいません。ごく少数の人こそ、圧倒的に飛躍する人達です。ところがその人たちが一人で仕事をしていると、ただの優秀な人で終わってしまうのではないかと心配になるのでしょう。懸念はそこにありそうです。

     

3 組織での活動は不可欠

日本の組織での問題を何人もの方が同じように語っています。飛び抜けた人が出てきて、会社で活躍してほしいと思っても、特別な報酬を出してやれない。そうして、とてつもなくいい条件で引き抜かれていくというのです。会社の体質の違いもあるでしょう。

何人かの方が、自社で人を育てても、うちでずっと仕事をしてくれるとは思えないと言うのです。そうなると自社でプロフェッショナル人材を育成する気にならないでしょう。しかし幹部の人たちは、組織での活動によって自分が鍛えられたことを知っています。

複雑な思いで、現状を見ている気がしました。圧倒的な人が会社を引っ張っていく体制にしたいと思いつつ、そうなりそうもなくて、予定調和的に平均的な仕事で終わる予感にリスクを感じているようです。このままではまずいというのは本音でしょう。

人との接触が少ない中で、どうやって成果をあげていけばよいのかが問われています。組織・集団の中で活動することが不可欠だという結論になるのでしょう。問題は、適切な頻度とその検証方法です。さらにはプロフェッショナル人材の待遇が問われています。

     

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