■ビジネス文書に何を書いたらよいのか

    

1 「何のために書くのか」

ビジネス文書を書くためにどうしたらよいのか、よくわからないという人がいます。何を書いたらいいのかがわからないと言って、苦労しているのです。しかしこれも訓練で何とかなるかもしれません。何を書いたらいいのかがわかるようになる練習もあるはずです。

文書の目的が明確なものならば、どんな内容にしたらよいのか、少なくとも方向性は見えてきます。何度かそうした文書を書くうちに、自分の知る領域に関することならば、だんだん何を書いたらよいのかも見えてくるはずです。書くべき内容は絞られてきます。

なんのために書くのか、その目的はどんなものであるのか、それをつかみ取る練習が必要です。何を書いたらいいのかわからないときに、まず最初にチェックすべきポイントは、「何のために書くのか」という目的がわかるかどうかだということになります。

     

2 「私」のない提言は無責任な発言

一番基礎に目的があると考えれば、その目的を果たすことが求められるということです。目的を果たすときに、誰が当事者になるのでしょうか。これも明らかです。自分がその目的を果たすしかありません。そうなると「私はこう思う」というスタイルになります。

自分がどう考え、どう判断したかを示すことが不可欠なことです。これは、今北純一の『欧米・対決社会でのビジネス』にもあります。ヨーロッパでは、[「私」のない提言では力がない]だけでなく、[無責任な発言ともとられかねない]というのです。

ビジネス文書ならヨーロッパに限らず、私のない提言では、責任回避したとみなされます。しかし訓練をしなくては簡単にはいきません。今北が言うように、日本では和を乱すのではないかと考えがちですし、[個人技の世界で遊泳する]ことになるからです。

▼それは、それまでできるだけ主語をハズした表現で通してきた人間に、突然、すべての表現において、主語を前面に押し出す「大転換」を強いるのと同義である。 文庫版 p.117

    

3 形式から内容を検証

ビジネス文書に何を書くべきか? 文書で求められる目的を見出して、その目的を果たす内容を書くことです。そのとき、自分ならどうするかという考えを持っていなくてはなりません。これが基本です。その書き方のサンプルを今北は示しています。

▼ヨーロッパ的にアレンジするなら、「わが社の現状はカクカクシカジカである。あらゆる角度からの検討の結果、私は、事業部制の導入が、ここまで老齢化したわが社の組織の活性化の唯一の切り札と考える」という形で論陣を張る方が迫力がある。 文庫版 p.118

今では「あらゆる角度からの検討」と言い切り、「唯一の切り札」と断定するのは、かえって拙さに見えるかもしれません。少し直すならば、「様々な角度からの検討」によって、これが「有力な手段」であると私は考える…といったところでしょうか。

もっと良い手段があれば歓迎すべきことですし、それを排除する必要はありません。ただ、文書の骨格のつくり方を見る限り、今北が示した「ヨーロッパ的」な形式が基本になります。何を書いたらよいかという点を、この形式から検証することも必要でしょう。

    

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