■ビジネスのプラットフォーム:業務マニュアルと標準化

1 標準作りが苦手な日本人

日本人は業務マニュアルを作るのがへただと言われます。その通りだとしか思えません。たいていの場合、標準を作るのが不得意です。自由討論になると、信じられないような議論が出てきます。標準化を嫌がる人が、必ずといっていいほどいるのです。

標準を決めることによって、組織が得る効果を理解しないと、困ったことが起きます。嫌だという人がいたらどうするのだ…といった発言が出てきかねません。標準を決めるから、組織のベクトルが決まるのです。プラットフォームがあるから、組織が安定します。

逆に言えば、組織は常に変化にさらされていて、変化しなくてはなりません。組織は不安定な存在です。つねにプラットフォームを見直す必要があります。やるべきことがやれるようにするために標準を見直すのです。標準化の価値を意識することが前提になります。

 

2 現場主義のリスク

日本では現場主義というのがよいとされていて、現場現場という人がいます。たしかに現場は大切です。実践する人の経験が重要なのは、間違いありません。現場の人たちが工夫しながら、きわめて上手く臨機応変の対応をしていくのは素晴らしいことです。

しかしそれはリスクを生みます。現場に経験豊かな人がいるために、臨機応変の対応が可能であったとしても、それがいつでもできる訳ではありません。「現場にはいつでも優秀な人がいるのだ」ということを前提にしたら、その前提自体がリスクになります。

何か問題が起きたときに、現場が悪いと批判するだけですませるのは、ダメな組織です。特別苦労することなく、標準的に処理できる仕組みを作ろうとすることが必要になります。トラブルやその可能性が見いだされたら、仕組みを考えるべきだということです。

 

3 組織の仕組みを記述した文書

組織のルール、方法、手続きを決めておくこと、つまり標準を作っておくことは、リスクを回避するために不可欠なことです。組織全体のプラットフォームがどうなっているのか、それを意識することが、組織の仕組みを変えていくときの基礎になります。

組織の仕組みを記述した文書が業務マニュアルです。マニュアル化するのはよろしくないということは、標準化がダメだということになります。現代の医療は標準化されているからこそ、安心していられます。しかし自分の仕事では標準を拒否する人がいます。

今回のコロナの騒動によって、自分も知り合いの方々も、先が見えずに不安に駆られることがあったはずです。今後どうすべきかを考える機会になったでしょう。そして、すでに成功した事例も見えているかもしれません。大きな差を実感する機会が増えました。

たとえば業界の売上げが6割ほど落ちた分野で、仕事が次々舞い込んでいる会社があります。別の会社に頼んでいた仕事が、ある特定の会社に集まっているのです。知る人ぞ知る小さな会社でした。社内教育の仕組みが他を圧倒しています。勝つのは当然でしょう。

 

 

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