■戦略と事業の定義:目標をどう決めるか その9

1 「The Theory of the Buisiness:1994」

リーダーは戦略を立てるときに、全体を見る必要がある。全体とは、曖昧な概念である。少なくとも3つの視点が必要となる。(1)ビジネス環境の全体像を見ること、(2)自分が関わるビジネスの全体像を見ること。(3)組織・自分のチームの全体を見ること…である。

ドラッカーは、これらをすべてを包括した内容を「ビジネスの理論(The Theory of the Buisiness)」で論じている。1994年に書かれたドラッカー後期の代表的な論文である。ここでポイントとなるのは、ビジネス環境、使命、中核的な卓越性だった。

ドラッカーはここで、ビジネスの定義をするように論じている。ビジネスを作り上げるときの前提を明確にすべきだということだった。ここから導き出されるのは、前提となる認識が間違えていたら、その戦略には意味がなくなるということである。

 

2 ドラッカー1994年論文の主張

戦略を立てる前の段階について、ドラッカーが論じている通りであろう。この論文については以前、【ドラッカー The Theory of the Business 「企業永続の理論」を読む】で論じた。かつて、この論文の日本語訳は「企業永続の理論」だった。

この論文で論じていることの意味が解らないという人が多かったため、上記を書いた。この論文は『チェンジ・リーダーの条件』にも所収されていて、かつてのドラッカーブームのときに読んでみたという人が多かった。そうむずかしい話ではないと思う。

この論文の主張を簡単に確認しておく。まず第一段階として、「ビジネスの領域を設定すること」、「成果の基準を決めること」、「強みを発揮する仕組みを作ること」の3つのことを明確にすることが求められる。これが不可欠であるという考えである。

第二段階として、4つのことを求めている。「これら3つが現実に合致しているかを確認すること」、「それぞれの内容が合致するように調整すること」、「この内容を組織全体に周知を徹底させること」、「これら3つをたえず検証していくこと」。

 

3 1973年と1994年の主張のブレ

こうした事業の定義があってこそ、ビジネスの戦略が立てられる。目標を立てるには戦略が不可欠である。その戦略を立てるには、事業の定義が必要であるということになる。しかし「事業の定義」について、気をつけなくてはならない点がある。

ドラッカーは、事業の定義について、『マネジメント』でも論じていて、その部分は『チェンジ・リーダーの条件』にも所収されている。この『マネジメント』の該当部分を先に読むと、かえって混乱することになる。たしかに両者には、すこしブレがある。

こうした混乱が1994年の論文「The Theory of the Business」を理解困難にさせる。『マネジメント』を先に読んだ人たちが、両者の違いに戸惑って、意味が解らないと言いだしていたように思えた。『マネジメント』はおよそ20年前の1973年の著作であった。

 

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