■目標をどう決めるか:人間の心理から その7

1 客観性には他人の視点が不可欠

マネジメントの考え方は、人間を基礎にして、いかに成果をあげるかを考えるものである。ドラッカーの5つの質問とは別に、ABCの3つの質問をあげたのも、それが効果を上げると考えてのことであった。これを考えると成果が上がるはずの問いである。

A「顧客にどう思ってもらいたいか」というのは、自分一人でこれが正しいと思っても、間違うということである。他人の視点が必要になる。他人の視点で自分たちをもう一度見てから、方針を決めることが大切である。これはビジネスだけのことではない。

小学生に作文を教えていると、あるとき急に、他人の視点を獲得したのに気づくことがある。「私はどうした、その時どうだった」という自分の視点からの記述が、あるとき変化をして、「相手が驚いていた」といった他人視点の文が混ざってくる。

マネジメントでは、顧客作りが目的である。顧客とは自分たちにとって大切な人たちである。その人たちが自分をどう思うかは最重要項目である。まず考えるべきことは、「顧客にどう思ってもらいたいか」であろう。それによってふるまいも変わってくる。

 

2 なすべき方向と道筋

B「自分達の思いを共有してもらうには、どうしたらよいか」ということは、自分達の期待と顧客の思いが一致することである。一致させることによって、思いが共有される。したがって、顧客は誰でもいいわけでなくて、顧客の定義が必要である。

ドラッカーの質問2は、「われわれの顧客は誰か?」であった。どういう人たちなら、顧客になってくれて、思いを共有してくれるかを考える必要がある。顧客がどんな人であるかを考えることによって、われわれがなすべき方向が決まってくる。

C「思いを実現するための道筋はどうなるか」というのが、いわゆる戦略のエッセンスになる。私たちは、ヴィジョンを持つ必要がある。まず、どうなりたいのかの姿を考えて、それを実現するために、何をやったらよいのかを案出することになる。

星野リゾートの「リゾート運営の達人」という目標なら、かなり多くの社員がそうなりたいと思うことだろう。「それ、いいね」と思わせるだけの思いがあれば、そこに到達したいということになる。その道筋を考えていくことが戦略の中心だということである。

 

3 難易度が高い目標の効果

ビジネスモデルというのは、こうやれば、思いを実現できるだろうというアイデアである。逆に言うと、これを実践するためには、もっと具体的な条件やら手続きを考えないといけない。詰めが必要になる。しかし、その前に、大枠ができていないとまずい。

『やってのける』で社会心理学者のハルバーソンは、「具体的で難易度が高い」目標設定が重要だと記す。[難しい目標の達成は、大きな充実感や満足感をもたらし]、また[人は求められた以上のことはしない傾向]があるから、難易度の高い目標が必要になる。

「容易に成功できる」と考えるよりも、「とてもきつい」けれども成功できると考えるものの成功率が高いという指摘は重要である。われわれの実感とも一致することだろう。高い目標とともに、「達成可能だと思える道筋=戦略」が必要だということになる。

 

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