■目標の高さを決めるもの :リーダーになってしまった人へ その22

1 「経済人」のモデルを否定

リーダーはマネジメントを理解したうえで行動する。これが原則である。しかし、こうした原則は、ごく最近に成立したものかもしれない。もともと、リーダーという言い方よりも、マネジャーという言い方がなされていた。日本語で言えば、管理職である。

業務を管理するよりも、部門の担当者たちを管理するのが管理職の主な仕事だった。それに先立って、ビジネス(事業)を定義して、それをもとに業務を構築するというのは、マネジメントの発想である。こうした考えに立たないと、高い目標は立てられない。

近代資本主義の経営というものを、経済学などでは標準化して考える。企業と消費者がそれぞれ合理的に行動することを前提としている。企業は「目的を設定し、計画を立て、実行する」存在であり、消費者は効用が最大になるように行動する人たちである。

こうした合理性だけで行動する人たち(経済人)で構成された世界でビジネスが行われるならば、マーケティングやイノベーションがこれほど重要にはならなかっただろう。ドラッカーは「経済人」のモデルを否定した上で、マネジメントを構築したのである。

 

2 「顧客」の概念

ドラッカーの『現代の経営』は1954年に刊行され、今も読まれるマネジメントの古典ある。この本でドラッカーは、ビジネスの目的を「顧客の創造」であると主張した。自分たちで顧客が作り出せるのならば、マネジメントほど大切なものはないことになる。

ただ、ここでいう「顧客の創造」は、どうやらビジネスに限られるものではなかった。非営利組織でも、顧客の創造が必要だということを、ドラッカー自身が『経営者に贈る5つの質問』で明確にしている。個人の場合でも、同様に顧客を創り出す必要がある。

ここでいう「顧客」という概念を、自分達の行為を必要とする人、あるいは賛同する人と捉えるならば、組織でも個人でも顧客が不可欠だと言える。『非営利組織の経営』でいう「何をもって、記憶されたいか」の「誰が」という主体が顧客である。

 

3 目標の高さを決めるもの

リーダーは、メンバーや進捗状況を管理する以上に、ビジネスが適切に行われているのかを管理しなくてはならない。必要に応じて、新しいビジネスを構築して行くことが求められる。そのとき「顧客」を作ることが不可欠になる。それがリーダーの目的でもある。

「顧客」を作ることがマネジメントを機能させることであり、この点からすると、顧客の創造こそが、マネジメントの目的であるということになる。この目的達成に中心的な役割を果たすものとして、ドラッカーはマーケティングとイノベーションをあげている。

リーダーは、自分たちの行為に対して、それを必要とする人、あるいは賛同する人を創り出すように求められる。それゆえビジネスを定義し、それに基づいてビジネス(業務)を構築することになる。この構築の出来によって目標の高さが決まるということである。

 

 

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