■改革・改善と目標 :リーダーになってしまった人へ その21

1 主観を客観に変える段階

ビジネスの定義によって、何を成すべきかが決まったなら、それを客観化していくことになる。客観化するということは、数字にしたり、「yes/no」で答えられる形式にすることである。逆に言えば、客観化の根拠、裏づけがビジネスの定義ということになる。

「いかにあるべきか」ということが、客観化によって、「いかにあるか」に近づいていく。ビジネスの定義に基づいて、自分達のあるべき姿が客観化していくことによって、目標ができあがってくる。自分たちの思いを現実にする流れがここにはある。

思いを現実にする作用は、主観を客観に変えるという段階を踏んでいる。目標を立てるということは、現実主義に基づいて客観的な基準を作るということである。客観的な結果を基準にして考えるということが現実主義であり、ビジネスの原則になっている。

 

2 低めの目標を立てたがる心理

目標の設定は、客観主義・現実主義の考えに基づいている。目標が設定されたなら、目標に対する判断は、客観的になされることになる。このとき、どんな領域において「いかにあったか」が客観的に示され、それが客観基準である目標との比較で評価される。

様々な要因によって、期待が現実にならなかった場合もあるが、現実になった結果が評価対象になる。こうした客観的な評価がなされることのために、しばしば目標を立てるときに、萎縮していると言うべきか、低めの目標にしておこうという心理が働く。

元ラグビー日本代表ヘッドコーチだったエディー・ジョーンズが『ハードワーク』で、最初に[明確な目標を設定すること]、[目標は、「そんなことができるわけがない」と思えるほど、大きなものを掲げるべき」と書いているのは、大切なポイントであろう。

 

3 改善・改革と同じ種類の作用

ビジネスの定義をするときにドラッカーは、環境、使命、卓越性の3つを要素としていた。外部要因である環境が検討対象になるのは当然であるが、ここで注意すべき点は、環境を検討するときに、自分達の現実を考えることになるという点である。

ビジネスに限らず、環境を検討するときには、現状がどうであるかを自ずから問うことになる。環境を分析することは、そのまま現状が外部環境に合致しているかの審査にもなってくる。「いまのままでよいのかどうか」という点が問われることになるのである。

目標を高くしようという意識によって、現実を環境にそったものに変えようという力が働くことになる。現状の延長線上よりも、もっと高い達成が可能になるのではないかということである。自分たちの強み、卓越性が発揮できているのかということにもなる。

現状を客観化することによって、改善点が見えてきたり、改革の必要性を感じることになる。客観化や現実主義で考えて、現状を改善したり改革することは、目標を立てる作用と同じ種類のものである。片方しかできないというのは、ありえないことだろう。

 

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