■「ビジネスの定義」というグランドデザイン :リーダーになってしまった人へ その19

1 「The Theory of the Business」

ビジネスに関して、グランドデザインあるいは全体構想というだけでは、いささか曖昧である。戦略と言い換えてしまうと、少し違ってくる。一般的に言えば、ビジネスモデルという言い方がなされるであろう。ただもう少し根本的なものだろうと思う。

ドラッカーの「The Theory of the Business」(企業永続の理論:1994年)では、ビジネスの定義(事業の定義)という言い方がなされている。これがグランドデザインを描くときの基礎になるはずである。これを描くのは「マネジメント」だという言い方をしている。

この論文でドラッカーは、マネジメントを行う人つまりはリーダーに問われるのは、何であるかを論じている。[「いかに」なすべきかの手法で]はなく、[マネジメントにとって、「何を」なすべきかが大きな問題となっている](p.25:『未来への決断』)。

何をなすべきかを考えるときの基礎となる要素が3つある。[組織を取り巻く環境についての前提][組織の使命についての前提][組織の使命を達成するために必要な中核的な卓越性についての前提](p.34)である。これらをリーダーは考えなくてはならない。

 

2 「顧客の創造」

ビジネスにおけるグランドデザインとは、自分達のビジネスを定義することである。その前提として、環境・使命・卓越性が問われる。「現在のビジネス環境下で、自分達は何をなすべきであるか、どこの領域に強みを持っているか」から考えていくことになる。

ドラッカーが『経営者に贈る5つの質問』で問うた質問に対して、正確に答えようとしたら、この3つの要素を考えざるを得なくなる。第一関門が、現在の環境がどうであるかということである点、注意が必要であろう。どこにお客さんがいるか…ということである。

5つの質問のうち、質問3の[「顧客にとって価値は何か?」という質問こそ、「5つの質問」のなかで際立って重要である](p.69:『経営者に贈る5つの質問』)というのも、その趣旨であろう。お客さんがいるかどうかという「存在問題」が問われるのである。

現在の状況下で、どんな製品やサービスの提供をしたら購入してくれる人がいるだろうかということが問われている。価値のあるものを提供するならば、お客さんになってくれる人たちがいるだろう。これが「顧客の創造」になるのである。

 

3 ビジョンと戦略

「環境、使命、中核的な卓越性」の3つの要素を明確にすることが前提になる。その上で、これらの要素をどう組み合わせていくべきなのか、ドラッカーは4つの条件を示した(pp..35-36)。箇条書きにすると、以下のようになる。

(1)3つの要素を現実に適合させること、つまりは現実を直視すること。
(2)それぞれの要素をうまく適合させ、統合させること。
(3)ビジネスの定義が決まったら、組織全体に周知徹底させること。
(4)ビジネスの定義をつねに検証していくこと。

ビジネスの定義をする場合、4つのうちのはじめの2つ、(1)現実が見えるのか、(2)各要素を上手に組み合わせられるか…という点が問われる。(1)は、モノが見えているか、ビジョンがあるかということ。(2)は、戦略が立てられるかどうかということである。

 

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