■リーダーの正統性の根拠 :リーダーになってしまった人へ その16

1 『現代の経営』と『マネジメント』

進むべき地点を間違わないように、リーダーは、個々人の行動と組織全体の行動、社会全体への影響を見ていく必要がある。このとき、リーダーがなすべきことの基盤となるものが何であるのか。この点について、その後、ドラッカーは重要な言及をしている。

『現代の経営』から約20年後、1973年に刊行された『マネジメント』を見てみよう。この本は『現代の経営』の改訂版を書こうとして、新たな著作となったものである。こうした由来もあって、『現代の経営』と『マネジメント』とは対照して読むことができる。

『現代の経営』の最後に書いていたことが、その後、『マネジメント』でどう変わったかを確認することは、意味があるだろう。もし、『現代の経営』を読んでいるのなら、ひとまず『エッセンシュル版 マネジメント』で足りる。これをチェックしてみればよい。

 

2 強みを生産的なものにする

ドラッカーは『マネジメント』で、リーダーが成果をあげなくてはならないことを指摘する。しかし[成果をあげるだけでは、彼らの権限は正統とはされない](『エッセンシャル版 マネジメント』p.275)と指摘する。マネジメントの役割と正統性は別である。

ドラッカーは[社会のニーズを事業上の機会に転換することが企業の役割であ]ったとしても[正統性の根拠としては不十分である]と指摘する。その上で[正統性の根拠は一つしかない]と言う。それは[人の強みを生産的なものにすること](p.275)である。

▼組織とは、個としての人間一人ひとりに対して、また社会を構成する一人ひとりの人間に対して、何らかの貢献を行わせ、自己実現をするための手段である。 p.276  『エッセンシャル版 マネジメント』

では、組織の基礎となる原理はどうなるか。[「私的な悪徳は社会のためになる」ではない。「個人の強みは社会のためになる」である。これがマネジメントの正統性の根拠である](p.276)。個人の強みを発揮させながら、社会への貢献をすることが必要である。

 

3 個人の多様性を活かす

リーダーがなすべきこととして、『マネジメント』でポイントを示している。組織を構成する個人が、①社会への貢献を行うこと、②自己実現を達成すること…の2つを両立させよ、ということである。このとき、個人の強みを発揮させることが条件になる。

個別具体的な個人個人の強みを生かして、目標を達成していかなくてはならない。個人の多様性を前提に、それぞれの強みをうまく組み合わせることがリーダーの仕事になってくる。ドラッカーが『現代の経営』で言ったことは、その後も変らずに有効である。

▼いかなる機関といえども、市民に対して全面的な忠誠を要求することはできない。この多元性にこそ、われわれの社会の力と自由の源泉がある。 下:p.272『現代の経営』名著集3

各人の強みを判断し、うまく組合わせることによって、結果として各人が、①社会への貢献ができ、②自己実現ができること…が理想である。そうするために、リーダーは組織を構成する個人個人を見ながら、「何を・どう実行すべきか」を決めなくてはならない。

 

 

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