■価値観と具体的な行動 :リーダーになってしまった人へ その7

1 価値観を問う「なぜ?」

「なぜ」と「いかに」は、5W1Hの「why」と「how」にあたる。この2つが「目的」と「手段」を問うているとも言えるだろう。「目的」も「手段」も、両者ともに必要であることは間違いない。ただ、いかにも大きな問い方である。

たとえば「なぜ?」の場合、問うべき内容が問題になる。「なぜ、Aさんがよいのですか?」という問いには、Aさんについての知識が大きくかかわってくる。ところが、「なぜ、親切なのはよいのですか?」という問いの場合、別の種類の問いである。

「なぜ?」の問いには、知識よりも価値観が問題になるものがある。このうち、価値観を問う方が根源的であろう。「なぜ、Aさんがよいのですか?」「Aさんが親切だからです」という答えが出されたら、親切がよいという価値観が前提になっていることになる。

マネジメントで、目的を問われる場合、上記の2つの問いのうち、親切がよいという価値観の方を示すことが求められるのである。「親切を最優先したサービスを行いたい」という目的が示されたなら、親切なAさんがよいのは、当然のことになる。

 

2 審査対象となる具体的な行動

各組織が目的を明確にして、それを使命とすることは、その組織の価値観を示すことになる。その価値観が、その組織らしさということである。このとき、組織ごとの価値観は「社会に受け入れられるかどうかの審査がなされるのだ」…と言ってよいだろう。

組織の目的が、社会に受け入れられない場合、その組織が社会で持続的に存在することは難しい。そのとき組織は、目的達成のための具体的な行動が問われる。実態を判断する場合、個別具体的なことに焦点が当たる。具体的な行動が審査対象なのである。

マネジメントでは目的を明確にしたのち、具体的な目標が明示される。目指すべきゴールを、客観的な指標として明確化することである。これは社会的な審査のためでもあるが、それ以上に、組織が成果を上げるための前提条件にもなっているのである。

 

3 目標設定に不可欠な戦略

[目的さえきまれば、それですぐ具体的にどういう行為をすべきかということがきまってくるわけではありません]と、岩崎武雄は『哲学のすすめ』で記している。[目的がきまったとしても、それを達成する手段は数多く存在しうるからです](p.54)。

岩崎は、[具体的にどういう行為をなすべきかということを決定するために、科学的な知識が必要となってくる](p.54)という言い方で、具体的な目標の決定には、別の要素が絡んでくることを示している。価値観でなくて、論理性が問題になるというべきである。

ドラッカーは『経営者に贈る5つの質問』で、こうした目標へのプロセスを示さずに、その前提条件を問うている。質問2「われわれの顧客は誰か?」、質問3「顧客にとっての価値は何か?」、質問4「われわれにとっての成果は何か?」…である。

目標を明示するためには、目標の到達可能性を示すモデルが必要になる。それがビジネスモデルであり、ビジネスの方法と目標達成の道筋を表す構想である。目標達成の構想は戦略とも呼ばれている。戦略は、さきの質問だけでは作れそうにないのである。

 

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